ホラーコミック界の風雲児、押切蓮介氏がカドカワの雑誌『幽』で2005年~2013年まで連載したエピソードの単行本。
帯にもあるとおり、著書自らの体験談や(元)アシスタントさんから聞いた話等が元ネタとなっている。
『赤い家』『黄泉の風』『暗い玄関』『静寂の谷』『市松人形』『咎』『後悔の奈落』『侵食』『生霊』『成長する小窓』『混声』『スイッチ』『オバケなんていないさ』『崖の上の歩哨』『謝罪』『愚か者共に私達の悲鳴は聞こえない』『招かれざる聞き手達』『アカイイト』『オバケなんていないさ2』の19エピソードが収録。
自分はホラーコミックや小説は数多く読んでいるが、押切氏の『サユリ』を読み、かなりの衝撃と恐怖を覚えた人間。これだけ怖い漫画を描けるということはそれだけ数多くの恐怖体験をしているはず、、と思っていたが、実際、押切氏も霊感や恐怖体験がないことが明かされている。
(お父さんのエピソードなんかは怖かったのに!)
そんな押切氏が『オバケなんていない!いないよー!』と言いつつも、心の中ではお化けの存在をどこかで信じ、それらに襲われたいという願望を持っているのは可愛らしく共感できた。各エピソードのあとに、あとがき(説明)が記載されており、『アカイイト』のところはなんだか笑えた。
後半からは描かれるエピソードの様子が変化してきて、今まで心霊をネタにしてごめんなさい→イタズラで廃墟巡りなんてしてはいけない等、説法・説教めいた話になっていく。これは押切氏自身が心霊に対する熱が冷めたため、ということも説明されており、全エピソードの最後の黒史郎氏との対談でも詳細に語られている。
心霊に冷めたホラー漫画家、、そこに一抹の寂しさを感じ、この作品からそこまでの恐怖を感じない(少なくとも『サユリ』の足元にも及ばない)理由も理解できた。願わくば、押切氏の心霊熱がまた再燃し、身も凍るほどの怖い作品を生み出してくれることを祈るばかりである。
幽霊の皆さん、押切氏を元気づけてください。
ひどい奴も、ずるい奴も、弱い奴も、強い奴も、鉄も、炎も、肉も、骨も、空気も、国も、世界まで、徹底的に殴りつけてきた物語がついに完結しました。
愛が無ければヒーローじゃない、と
キン肉マンの歌詞にありました。
クロと沙羅には確かな愛情があったと思います。
ラストはその感情が絵柄と共に爆発しています。
押切先生のマンガに関わってくるのは、いろんな形をしていますが「愛」だと思います。
そして、にじみあふれる力強さですね。