空海1200年、高野山での日々のお勤めと年間の主要行事が、四季の移り変わりに重なるように紹介されています。全90分。字幕は日本語(要を得た説明)、
英語、切り。音声は音楽+自然音、自然音のみの切替え。映像は深くて鮮明。興味はあっても飛び込めない人もいると思いますので、紹介させていただきます。
冒頭、根本大塔の内陣に安置されている胎蔵界大日如来像が映し出され、おやさしい慧眼と静謐感に打たれ、安堵と親しみを感じました。2月14日の夜11時から翌朝にかけて行われる常楽会は釈迦入滅を偲ぶ命日法要で、20分弱の声明、信のこころがそのまま捉えられています。朝勤行では、香水をまいて清めてからの声明です。春のやわらかい桜、初夏のあでやかな石楠花が映り、大師入定の日の前夜の御逮夜では全国から信者が集まり、各堂が一般公開されます。生身供は、日に二度、大師の御廟へお膳を運ぶ行事。8月の萬灯会では、奥之院へ向かう参道は参拝者が灯す蝋燭で埋め尽くされます。そして見事な
紅葉と高野山の雲海。
人間の業(ごう)と涅槃を求める思いが裏表なのが分かります。本来の仏教、涅槃への悲願が、どこか遠い話ではなく、ここでは日々の生きている思いです。ですが、伝統重視の作品作りがどこか重く、本作にロマンを求めてしまった僕にはしんどい作品でした。音楽が重さを和らげてくれるようで、音楽をオンにしたりオフにしたりしながら見ました。ともあれ、よくここまで高野山の内部を映せたものだと思います。苦労がしのばれる大作です。
年間主要行事、声明、読経の様子と建物の映像といった仏教伝統が主で、風景はごく僅かです。高野山の自然をもっと多く取り入れ、修行僧の日々の生活の様子、例えば勉強会や食事の様子等も入れれば、親近感が出て見やすい作品になったのではないかと思います。この辺りを考慮し、四点としました。