「気になる嫁さん」は1971年10月から1972年9月まで一年間に渡って放送されたホームドラマでしたが、放送時間まで
には帰宅出来ず、全く視ることが出来なかったドラマの一つです。
放送当時の榊原ルミさんは、まだ、21歳頃だったと思いますが、このドラマはアイドル真っ最中の榊原さんが主役の作
品であるにも関わらず、DVD-BOXには「石立鉄男生誕70周年記念企画」の文字が書かれていて、これには納得がいかない
ものがあります。
この頃の石立鉄男氏は、まだ、ドタバタギャグのお笑いで人気が出てきた駆け出しの頃ですからとても演技とは呼べな
い内容です。
榊原さんは確か、「男はつらいよ 奮闘編」でマドンナ役を演じていましたし、「帰ってきたウルトラマン」のヒロイ
ン役や「俺はご先祖さま」第8話で春山容子役で出演していたと思います。
画質ですが、当時のアイドル路線のドラマということで、軽んじられていたためでしょうか、撮影は35mmフイルムでし
たが、16mmフイルムにデュープされ編集されたため、画像はフイルムの粒子で荒れています。
今回、DVDで初めて視る榊原ルミを取り巻く芸達者な浦辺粂子、山田吾一、富士眞奈美等のコミカルな演技によるドタ
バタ騒動劇やホロリとさせられる場面が40話まで続き、まったく飽きさせません。
放送当時の1971年頃は、
大阪万博の翌年でバブルが上昇し始めた頃であり、「消費は美徳だ!」というかけ声に踊らさ
れ、物価は毎年上昇し、1971年にはドルショック、1973年にはオイルショックという狂乱物価に見舞われ、使い捨てが当
たり前の社会となっていました。
世の中は金が全てという拝金主義の風潮が蔓延し、さらに核家族化が加速されていったのもこの時代でした。
人間の評価も如何に金銭的な生産能力を有するかで決められた時代で、日本人の多くの精神文化を失った時代でもあり
ました。
このドラマでは、表面上はバブルに踊らされた拝金主義の清水家の兄弟姉妹による金にまつわるドタバタ劇が展開され
るのですが、この作品のすごいところは、父親の呂之助、家政婦のたま、純の婚約者のめぐみの三人が織りなす静かで物
言わぬ演技が、行き場を失った老人の悲哀を滲ませ社会の狂騒劇を痛烈に風刺していることでしょう。
また、40数年前の当時の風俗やファッションも懐かしく想い出されますが、何といっても佐野周二や浦辺粂子が本物の
演技というものをじっくりと見せてくれるところでしょう。
現在、これだけの本物の演技を見せてくれる役者は皆無といえます。
そして、女性の誰もが咲き誇る花のように光り輝くピークがあるように思いますが、何と言ってもDVDの中では、榊原
ルミさんの愛くるしい光輝く笑顔が永遠に視られる素晴らしいドラマとなっています。
小中学生の頃、再放送で石立鉄男のシリーズはいろいろ見たが、子供心に「気になる嫁さん」が一番面白いと思った。大人になってDVDで見直したが、今もその思いは変わらない。榊原るみはかわいいし、関口宏の父、浦辺粂子、富士真奈美等の配役もまた良い。
一般的には「パパと呼ばないで」や「水もれ甲介」の方が評価が高いが、私は「気になる嫁さん」が石立シリーズの最高傑作だと思う。
清水家の家族はそれぞれが自分勝手に生きているようで、皆心は優しくて愛がある。全体的にはコメディだが泣かせるシーンも何箇所もあるし、子供から老人まで年齢に関係なく楽しめる最高のホームドラマだ。
PART・1の最初数話は、役者のせいもあり?観ていて恥ずかしくなるようなシーン、
あるいは、少女マンガ的幼稚な演出部分もあって、興ざめなシーンも多いが、
この後半の全20話は、脚本家や
スタッフ・役者全員が一つになり、
いよいよ将来を予感させる石立ドラマワールドが徐々に開花してきているのでは・・・と実感できます。
すばらしい個性派の富士真奈美も加わりドタバタ劇のスタートですが、涙あり笑いありの脚本の中に
人として忘れてはいけない大切な光り輝く純粋な精神が今も色あせず息づいています。
この作品を観ていて、それを忘れかけていたことにふと気づかされ、同時にハッとさせられます。
日々、当たり前のように同じ屋根の下で生活する「家族」とは何なのか?
一輪の赤いバラの花のラストシーンが過去と未来を語っているような最終回が心に響きます。
石立ドラマはどれもそうですが、観ていて面白いだけでなく、
心が洗われ若かりし頃の純粋なやさしい気持ちに戻してくれる不思議な力があります。
私は当時、榊原るみに憧れ、再出演を期待しつつ一連の石立ドラマを観続けることになるのですが、
残念ながら再出演はありませんでした(笑)
しかし、この作品以後、6年間観続けた石立ドラマシリーズは学生だった私の大切な教師のようなもので、
または、一般常識やいろいろなボキャブラリーを学んだ楽しい社会学の授業のようなものでした。
1970年代、ユニオン映画社が手がけた、石立鉄男ドラマの主題歌、挿入歌がほとんど収録されている画期的かつパーフェクトなコンピレーション。特に2曲目の「気になる嫁さん」など、レコード未発売にもかかわらず、TVフィルムから音を、それもかなり高音質で拾ってくれており、嬉しい限りです。3曲目の「パパと呼ばないで」の主題歌「虹」は、ペイネをほうふつさせる、あのアニメーション(当アルバムの
ジャケットにも使用されている)のオープニングを聴く者に鮮明によみがえらせます。ブックレットも、ドラマデータが満載で素晴らしいの一言です。聴きおわった後には、ユニオン映画のすばらしい石立鉄男作品たちを、もう一度観たい欲求が押さえられません。