ダブル (双葉文庫)
面白かった!
永井作品は割と読んでいるのだが、その中でも個人的には最高傑作。
完成度といいざらっと残る不快な感触といい、底の深さを感じさせる作品。
もともとこの作者は女性のいやらしさとか偏狭さとか、
いやな部分を描くのがうまいと思っていたが、今回は少し切り口が違う。
描かれるのはゆったりとしたお嬢さん風の妊婦。
主人の浮気を心配し、ヨガを楽しみ、母親と仲良くしながら優雅に過ごす。
その彼女の周りでじわじわと起こる、よくありがちな小さな事故や事件。
ところがそれが死亡事故や事件につながり、
その事件に関わる小さな記念品を慈しむ彼女の姿が、女性記者の目に留まる。
それを追う女性記者も、あやしいと思いながらも彼女に惹かれ。。
こっから先はネタばれするので書けません。
ただ、二転三転する代わりに、ずるり、ずるり、と、
皮が剥けるように事実が浮かび上がるその感触がたまらない。
この作品を他の人はどう読んだんだろう?
底意地の悪いひんやりした悪意が怖い。
気味が悪い、でも、なぜかあたしはこの妊婦を嫌えない。
うーん、すごい。
永井するみは昨年、ひっそりと45才の若さで急逝している。
そのあまりの早さを読了後に、本当に残念に思った。
欲しい (集英社文庫)
永井するみほど女性心理の描写がうまい作家は数少ないと思う。
人材派遣会社を経営する由希子、42歳が軸となって話が展開して行くが、ラストに近づくにつれどんでんがえしの面白さがある。
そこかしこに人間のずるさ、要領のよさが現れ、何とも言えない気持ちになるが真実が明らかになった時は胸を撫で下ろした。
願わくばラストまで悪事がばれなかったテルにいつか天罰を与えて欲しい。