フルチ監督が「野獣死すべし」(80)、「墓地裏の家」(81)、「ビヨンド」(81)の共同脚本家ジョルジオ・マリウッツォと三度手を組み、初挑戦した学園スラッシャー物SFサイキック・ホラー怪作(87年製作)である。低予算の為、本作でフルチは出演の他に特殊効果を自ら担当している。
全寮制の学校や女子寮を舞台に虐めが原因で交通事故に遭い、昏睡状態になった女生徒(キャシー)が奇抜な手口で復讐を果していく。
頭が弱く色気もない掃除婦の娘キャシーが、病室で(事故後に超能力に目覚め)頭に沢山の管や生命維持装置につながれた状態で霊的パワーを駆使する訳だ。キャシーの入院と同時に学期の途中から編入してきたエバ(ララ・ナツィンスキー)の登場が微妙に重なり、何と彼女の身体に時折、憑依しては操るのである。
「キャリー」(76)、「サスペリア」(77)、「パトリック」(78)、「フェノミナ」(84)...等から部分的に貰い受け、奇想天外な心霊現象や超常現象を掛け合わせた様なプロットである。怨恨が生霊と化し、生きた人間に取り憑きオカルト殺人鬼に変貌するエバの奇行や凶行振りも見所の一つ。
虐めに加担した体育教師は、大型スポーツミラーから飛び出して来た自分の分身に絞殺される。真夜中、睡眠中に大量発生したカタツムリの群れに全身を覆い尽くされ窒息死する同僚。夜の
美術館で突如動き出した
石像に後ろから羽交い絞めにされ、首を絞め殺される同僚。男友達の首無し死体の幻覚を見せられた挙句、窓から墜落死する同僚。その墜落死した彼女を窓下に発見した途端、シャッターが下りてきて首を切断される男など、奇妙な殺人描写が満載。
曾ての残酷スプラッター場面は影を潜めている演出描写で所々不気味なおどろ、おどろしい雰囲気を醸し出してはいるが稍、時代遅れの作風である。ショッカー演出も薄口と思えてならない。過去、眼球に拘った衝撃的な映像や決め手要素が欠落している。
乗り移られた謎の編入生エバを演じるは、ランベルト・バーヴァ作「暗闇の殺意」(83)でミケーレ・ソアビ演じる倒錯殺人鬼に殺されたヒロイン役ララ・ナツィンスキーで、リチャード・フライシャー作「レッドソニア」(85)にも出演した美貌の女優、ナスターシャ・キンスキーとは従姉妹の関係である。
女生徒好きでエバからジェニーに乗り換えた為、命を狙われるアンダーソン医師を演じたのは、ジャレッド・マーティンで、同監督作「未来帝国
ローマ」(83)では正義感溢れるヒーロー役であったが、本作では女好きのおっさんに成り下がっている(笑)。
<80年代後期、失速、低迷中のフルチ作品でも、まだ見られる方の怪作仕上がりである。フルチにしては、ラストはあっさり、拍子抜け気味であるが...。>