ずいぶん昔にテレビで見ましたが、杉浦直樹さん演じる息子の歳と同じくらいになり、改めて見ました。家庭、親子、人生、身につまされる台詞や場面がいくつもありました。
笠智衆さん演じる父親が「(病院を)抜け出せばいい」と言うところ、私の日頃疲れて硬直している心がじわっと溶けるように感じました。みんなで「恋の季節」を歌う場面では「死ぬまで私を 一人にしないと あの人が言った」という歌詞に涙が出ました。
笠智衆の味のある演技に感動させられました。宇野重吉とのやり取りもよかったです。親に見せたら亡くなった田舎の祖父を思い出したと言ってました。
メジャーなのにマニアック、という人である。たとえば同じ脚本家でも三谷幸喜のような超
メジャー級の存在ではない。だが多くの日本人が山田太一の作品(ドラマや小説)を好んでいる。その支持のされ方は、
猫も杓子もというわけではないが、支持する層は確実に、それも割に広範に存在するのだ。しかし、過去のシナリオやエッセイや小説を読もうと思ったらほとんど中古本を買うしかない、という程度にはマニアックなのである。
中古本で読みしのいできた者には少々複雑であるが、山田太一の古い小説がいま続々と再刊されている。どうやらいくつかは外国語に翻訳されて、海外でも人気があるらしい(とはいえ、村上春樹のような狂騒的な売れ方をしないのもまたいいところ)。本書のようなムックまで出て(2013年5月30日初版)、総特集が組まれるほどの静かだが確かな人気である。この人の
メジャー的な側面を物語る、これもひとつの現象だろう。
本書には詳細な作品
データベースをはじめ、最近のインタビュー、新旧のエッセイや対談、はたまた名台詞集など、山田太一ファンにはこたえられない情報がたっぷり詰まっている。これまたばか売れする本ではあるまいが、買った人は必ず一言一句しっかり読んでしまうような「良い売れ方」というか「生きた売れ方」をするに違いない本だ。「山田太一が選ぶ、50年後も観られるべき映画20本」なんていう興味深い企画もある。
最新のエッセイで、山田太一はこう書く。「時代の流れが激しく太くなった時にはとるに足りないものになって行く小さな本当、小さな矛盾、小さな誤解、小さな深淵、小さな善意、小さな夢、小さな物語は、まだ日本では書く余地があると思うから(ないのかな?)、急いで未来に適応しないで、アナクロニズムを生きるのも積極的なことなのではないか、などと思っている」。この人が支持されている限り日本はまだ大丈夫、捨てたもんじゃないよ、という気がしている。