昔ここに投稿した高浜作品についてのレヴューを読み返したら、阿部嘉昭の文章がキッカケで私は高浜寛を知ったらしい。そうだったのか、忘れていた。
しかし最初の出会いがどうあれ、高浜のマンガ(と書くのに躊躇はあるのだが……)は好きだ。
この作品は日仏同時発売だそうで、未確認だが仏版はもしかしてオールカラーじゃないのか? だから単色の日本版では、絵の見にくい部分があるのじゃないだろうか。最初は少し読みにくかった。
先行レヴューにもある通り、物語の展開には「やられた!」という感じだった。しかも単なるどんでん返しの驚きではなく、盲点を突いて切なくなるような視野を拓いてくれる。
高浜はこれまで、本作品で描かれたような男女の不安定な、行きずりの関係を繰り返し取りあげてきた。男女は
フランス人と日本人という場合が多いが、日本人同士の場合もある。ただいずれの場合でも、視点は男性側にあることが圧倒的に多いはずだ。特に『凪渡り ― 及びその他の短編』では、全体を支える視点人物となる男性漫画家に高浜という名まで与えており、そこに高浜の、自らの女性性を外から捉えようとする強い知性的な志向性を感じる。ま、高浜寛という名前そのものが通常は男性だろうと思うが、そういう名前を選んだところがすでに自身の女性性に対する否認を予感させる。
ちなみにネット上で確認した仏版の表紙絵は日本版とアングルが異なり、日本版以上にマンガ的な印象を与えるが、書名の意味をより分かりやすく伝えてもいる。