夏純子ファンだから、彼女が出ているだけで3点。夏純子ファンのきっかけは松竹映画の『喜劇・女売り出します』以降だから、それ以前の作品は名画座回りで見なければなりませんでした。地方の観客に旧作品が見られるわけがありません。したがって『喜劇・いじわる大障害』はあきらめていました。このたびの発売は朗報。
あらすじは「東京でひと旗あげようとする豪農の息子・次郎(岡崎二朗)。初めはツカなかったのが、一転してツキだし、あずき
相場で当てる。落ち目の時に救ってくれた春子(夏純子)に求婚するが、金にふりまわされていると断られる。政府のあずき輸入プランで無一文になった次郎を、春子だけが待っている」という話。監督が藤浦敦さんだから、見る前から面白くなっているとは予想しませんでした。日活ロマンポルノ時代の愚作『蛸と赤貝』の監督さんですから。これはもう映画館で退屈で退屈で・・・その後、彼のロマンポルノ8作品は1本も見ていません。喜劇は難しいものです。
実は藤浦敦は三遊亭宗家の子息。その初監督作品ということで円楽はじめ三遊亭家の落語家が大勢出演しています。役どころは円楽はホストクラブの気取ったマスター、円歌はトルコ風呂の経営者、小円遊は交番の警官などなど。そのほかに毒蝮三太夫が理不尽なタクシー運転手、南利明がお調子ものの不動産屋の社長、ケーシー高峰がインチキ産婦人科医、口から出まかせの易者が林屋三平、痴漢でスリが林屋木久蔵(木久扇)、堂々と詐欺を働く女親分が宮城千賀子といった喜劇人が田舎出の次郎(岡崎二郎)を東京で翻弄する役で少しづつ出演。立川談志がなんでもコンサルタントと称して次郎を手玉に取る従兄役で準主演、かつ監修を担当しています。しかし、映画にはキレや突出したところがなく、談志の監修が功を奏しているとは私には思えませんでした。
いまは亡くなった多くの芸人の七十年代の姿が見られ、芸風を垣間見られるという意義はあるものの、それらはアナーキーな笑いを引き起こすほどではないし、テレビのなかの喜劇という枠を超えるものではありませんでした。