徹底的に濃厚。中世の陰鬱と狂気ともいえる残虐で原始的な快楽への熱中が全編を通して表現される。この時点で拒否反応を示す人がいるかもしれない。字幕ではプロテスタントとなっているが、正確にはこの婚礼で虐殺されたのは
フランス語読みの「ユグノー」たち。
イタリア出身のしたたかな王妃カトリーヌドメディチの策によってカソリックとユグノーの和解の象徴としてユグノー領地の王アンリと結婚させられた長女マルゴの生き方を濃密に表現した映画。音楽が重厚で悲愴に満ちている。淫蕩でありながら聡明である二面性を持った王妃マルゴをイザベルアジャーニが濃演。個人的に、マルゴの次女役で出演している女優の妙演にかなり好印象。偉大な皇太后カトリーヌ亡き後、この映画中で栄華を誇ったヴァロア朝の王兄弟に嫡子はなく、結局
フランス全土の王冠は「ユグノーの花婿」として人質同然に婿入りしてきたナヴァル王アンリのブルボン朝に受け継がれる。このブルボン朝から後の太陽王ルイ14世が生まれる。歴史の皮肉である。この映画には登場人物が多く名前と顔が一度見ただけでは一致しない。一度みて全貌をつかんだ後に、2度3度と見ると、そのたびに何かしら発見のある映画。
ヴァロワ朝末期の
フランス。長く続いたプロテスタントとカトリックとの抗争に終止符を打つべくプロテスタント側の頭目アンリ・ド・ナヴァール(のちのブルボン朝最初の国王アンリ4世)と国王シャルル9世の妹マルゴが結婚する。
しかし数日後の
サンバルテルミーの祝日の日、カトリック教徒達は結婚式の祝祭のために
パリを訪れていたプロテスタントたちに襲いかかる。
サンバルテルミーの大虐殺である。街のあちらこちらで繰り広げられる殺戮。そして…
三銃士などで有名なデュマの傑作を基に、
フランスが総力を挙げて作製した映画。
ハリウッド映画とは違い、時代考証がしっかりとなされており、お気楽なハッピーエンドではなく、考えさせられる形で話は終わる。
できればこの作品は見る前にその時代について一通り学んでおいたほうが理解しやすいだろう。