岡本太郎のドラマが放送され、毎週はまって観ているが、父母の一平・かの子についての知識がなかったので、興味がわいて読んでみた。
ドラマ以上の一風変わった夫婦・親子関係と、壮絶な日々を送っていた事に驚く。
本書は、岡本太郎が生前に、各雑誌・新聞で父母について書いたものを集めた一冊。
巻末の初出一覧で見ても、各年代にわたって相当数の書籍に掲載されたので、重複して描かれている部分がいくつかあり、その点で★4にした。
私が、岡本太郎を知ったのは、
大阪万博の頃。
それ以降、TV、CMに頻繁に出演していた岡本太郎の印象は「ものすごく変わった人」。
しかし、本書を読むと、それほど変わった人ではなかったように思えた。
子供の時に何度も学校を転校しており、大人の欺瞞や矛盾を許せない純粋さは、母親譲りだったと見受けられる。
太郎が語る母・かの子は、童女のように純粋で芸術に熱く生きる人、実生活を営む能力は全く欠けていて、外界からの誹謗中傷にいつも傷ついていた人。
父・一平は、妻・かの子が芸術に心底力を注げるように、慈父のごとき愛で支えた人。
一平がかの子を支えていく決心をしてからは、一般的な夫婦生活とは異なる道を歩んだ点にも驚いた。
太郎が父母に感謝している事は、世間一般の父母としては二人とも失格だが、常に同等の友人のように扱ってくれた点だと記している。
また、母が亡き後に、父が再婚した継母と腹違いの弟達の生活を、戦後、太郎が支えたという点は初めて知った事。
太郎が「誤解のカタマリみたいな人間こそ、すばらしい。純粋であり、純粋だから誤解される」と、母を論じた一節が心に残った。
一平、かの子の写真、作品の写真等も、多く掲載されている。