ルーヴル
美術館は、これまで3度ほど訪れたことがあるが、もちろん展示されている作品のごくごく一部をかすめ見たにすぎない。
とにかく巨大すぎるのだ。
セーヌに沿ったドゥノン翼の端から、シュリー翼の端までが約1キロ。1993年からはそこに、それまで大蔵省が入っていたリシュリュー翼が加わったから、気の遠くなるような広さである。
そんなルーヴルの3000点を超す永久収蔵<絵画>のすべてを1冊の本で見ることができるのだから、ありがたい企画だ。
もっとも、約800ページのなかで3000点を紹介しているため、名刺の半分ほどのサイズの絵も相当数ある。
そこが難点であるが……まあ、それは仕方がないか?
全体は<
イタリア絵画><北方絵画><
スペイン絵画><
フランス絵画>の4部に分けられ、主要作品には要領よくまとめられた解説が付されている。
<色づかい>や<スタイル><見どころ>の指摘などが的確になされていて鑑賞の手引きとなる。
私は――(1)まず絵を見つめ、(2)解説を読みながら絵の細部を参照し、(3)もう一度作品を見直す、という3ステップで本書をめくっている。
1日30点見ていくとして、読了するには3か月以上かかる計算になる。
そのため、まだ最初の<
イタリア絵画>部門にいるけれども、早くもピサネッロの不思議な静謐さをたたえた貴婦人や、ウッ
チェロの幻想的な世界(
鎧のこのメタリックな輝き!)に出会うことができたのは<収穫>だった。
とにかく、3000点を超える作品が収められているのである。
丁寧に見ていけばかならずや、「これは!」と、自分の感性に訴えかけてくる作品に出会うことはまちがいない。
もちろん、画集だから本物の絵ではない。複製である。
しかし、複製から感動を与えられることもあるのは、小林秀雄のいうとおりだろう。
《嘗て見たもの【ゴッホの絵】は不完全な画面であつたが、それから創り上げた感動は、感動といふものの性質上、どうしやうもなく完全なものであつた》(『近代絵画』)
付属のDVDにも触れておけば、作家別の索引や、<
イタリア絵画><北方絵画>……別のコーナーから好きな絵にアプローチできる。
しかも、(全作品ではないが)主要作品には<拡大機能>がついているので、ディテールを確かめられる。
これはちょっと役に立ちそうだ。