わたしをアバンギャルドに連れて行ってくれた「先生」のようなアルバム。リンゼイ・クーパー(バスーン、オーボエ)が加入して起こったメンバー間の科学変化を記録したドキュメントとも言えます。Unrestは、ヘンリー・カウがこの後、ヨーロッパ全域に拡大させるポピュラー音楽革命の前提となる基本認識と言えます。が、本当は4曲しかできていなかったにも関わらずスタジオ入りせずにいられなかった不安も表しているのかもしれません。リンゼイにいたっては、虫歯を抜いて出血しながら録音にのぞんだ、ということなので。
5曲め以降がインプロビゼーションになります。意図したことではなく、本当に曲ができなかったかららしいです。テープ操作やエフェクト処理も含めて何でもトライしている感じです。何曲かはオーバーダブも施していません。フレッド・フリスにいたっては、ギターと弦を担当しているので大忙しだったでしょう。好きな曲は「Deluge」で、曲の進行につれどんどん暗くなっていきます。
中では、「Ruins」の出来が傑出しています。リンゼイの加入がグループに欠かせないものだったことがわかります。大団円でメンバーのアンサンブルになるが、その瞬間の感動は並み大抵のものでありません。好きだなぁ、こういうの。クリス・カトラーのドラミングってクセになりますね。
僕はジョン・ウェインの大ファンなので、逆に関連作品についてレビューを書くのに躊躇していたのですが、やっぱり一言申し上げずにはいられませんで・・・。
この作品は、長年
ハリウッドに君臨し、西部劇の王者、アメリカのシンボルとまで云われていたジョン・ウェインが、何と60歳を過ぎて初めてアカデミー主演男優賞を受賞した記念すべき西部劇です。いわゆる大作ではないのですが、それまでの他の作品とは違う、独特の風情漂う異色作です。例えるならば、それ以前のジョン・ウェインが「暴れん坊将軍」的存在であったとすれば、この作品では「水戸黄門」的存在に変化しているのです。ある意味昇華されている、と僕は感じました。そこには、演劇という技術を披露しているジョン・ウェインではなく、ジョン・ウェインとしての生き様を素直に表現しているジョン・ウェインがいる、そう思うのです。
遺作となった「ラスト・シューティスト」と合わせて観ると、より印象が深まります。
ロックにオルタナティヴ、カウンター・カルチャーとしてのパワフルなインテリジェンスを吹き込み音楽そのもののあり方を問うような姿勢をもち続けたHENRY COW。彼らのデビューアルバムである本作は、さまざまなジャンルが交流したブリティッシュ・ロック・シーンの一つの到達点を示す名作です。フリー・
ジャズや現代音楽などを積極的に取り込んだ演奏は、ロック・ファンだけのものではなく、室内楽や
ジャズを好む方にも必ず訴えると思います。若々しくチャレンジングな姿勢がじつに爽やかです。このESD盤はオリジナルLPとはミックスが若干異なりますが
ボーナス・トラックがあります。オリジナル・ミックスはReR盤のCDになります。