過激なエログロを期待すると肩透かしをくらいますが、異色のB級エンタテインメントとして観れば十分楽しめました。原作とは明らかに視点や狙いが異なります。別物でしょう。逆に原作を大胆にアレンジしたセンスを評価したいです。個人的には70年代、80年代のホラーやサイコスリラーのエッセンスが随所に感じられ、展開にも意外性があり(やや強引ですが)、退屈しませんでした。独特の映像美や、宗教画をモチーフにした
タイトルバック、クライマックスの結婚式のアレはけっこう好きです。ただ、もう少しお金をかければよかったのでは?と思う箇所がいくつかあったのは事実ですが…。役者では、主演の
加藤雅也が予想以上に雰囲気があって健闘していた他、三輪ひとみの美しい存在感、原史奈の可憐さ、前田綾花のキレ具合が良かったです。あと松方弘樹は凄すぎです。
悪評嘖々。素人監督は駄目という批評ばかり。だが私はこの映画は名作と思う。この映画が日活を倒産させたのは本当かもしれない。だが当時東映の「
宮本武蔵」さえ最終巻で予算が削られたという時代。
悪評の本当の理由は、関東軍将校の主人公がアヘン取引で軍を支援するという所にあるような気がする。伴野監督を素人と非難する理由はどこにもない。
山本薩夫の「戦争と人間」でできなかった中国ロケが「落陽」ではふんだんに取り入れられて美しい。そして昭和前記の日中関係をみごとに描いている。
それだけでも結構な映画と思うが、当時の。娯楽映画だと思えば評価も変わるのでは。歴史を知らないと、この映画の虚構と真実は語れない。勿論映画自体は虚構だが、確かな史実を土台にして作られている。