SEVEN SAMURAI 20XX
映画ファンでゲ-ムを楽しみ遊びたい人には是非どうぞ。黒沢監督ファンもなつかしの場面の雰囲気に後半戦ではフラッシュバック的に堪能できます。例えば映画七人の侍の中の三船ヨロシク刀を構えて走るシ-ンやのぼりのマ-キング、各キャラの顔つきや何気無いしぐさの動作等々。アクションル-ルは、インパクト直前にガードボタン&回避ボタンの同時押しの連打で応酬すればあるていどはクリヤ-できます。二刀流モードでの敵を切り刻むタイムリミットが制約となってあえて敵から逃げたり若しくは敵をわざと泳がすという智謀や戦術も必須です。オープニングのシーンがSFチックなのにBGMがサムライスピリッツという落差のミスマッチ。この作品と出合えて本当にありがたき幸せです。
いまだから読みたい本――3.11後の日本
主に80年代の日本を代表するバンドYMOやアカデミー賞も受賞した映画音楽などでの世界的評価を背景に、環境問題など多くの問題に、広い意味での表現者として意見を表明し、脱原発運動のアイコンとなるなど、ある種のオピニオン・リーダーとしての存在になっている音楽家・坂本龍一と、6人の編纂チームが編んだ文筆集。
実際に抜粋されているのは、十数編の文章・詩・演説であるが、「さらに読みたい人のために」として、89冊の書籍についての、編者らによるブック・レビューが並ぶ。
抜粋された文章の趣旨は、私にとっては、ほとんど、どこかで見たり聞いたりしたことのあるような内容であり、復習的な感覚でさらさら読めたが、手塚治虫が「じつはたいへん迷惑していることがあります。(中略)『鉄腕アトム』が、未来の世界は技術革新によって繁栄し、幸福を生むというビジョンを掲げているように思われていることです。」というのには、そんなこと言われてもねえ、と思った。最近の子供はどうか知らないが今大人世代になっている多くの人が子供の頃に聴いた、あのテレビ・アニメ版の明るいアトムのテーマソングを聴いたなら、アトムが科学の未来に希望を託したキャラクターと思われても無理なからぬところがあると思う。そういう意味では、いかに手塚治虫が自分の作品で表現したかったものが伝わっていない状況を迷惑と主張しても、分が悪い感は否めない。
核の力、原子力にしても、それが発見された当初は、兵器としての利用は脅威であり悲劇ではあっても、電力を生むエネルギー源としての利用は平和利用であり私達の生活を豊かにするものとして多くの人々に期待され、希望を託された感は否めない。しかし、スリーマイル、チェルノブイリ、福島、と、忘れかけたころに繰り返される悲劇を見れば、あるいは、将来何世代にもわたって負担となっていくような廃棄物の問題を考えれば、その期待・希望が甘すぎる考えであったことも、また、否めない。
しかし、その甘すぎた考えに大した反省もないままに、2012年6月現在、民主党・野田佳彦政権も、その批判者たるべき最大野党・自民党も、原発再稼動に突き進もうとしている(社民・共産などの小政党、あるいは第三極などと見られる他の勢力が原発に反対するだけでなく、二大政党である民主党や自民党にも、少なくとも現時点では原子力体制に疑問を持つ向きもないではないが、世論はともかく、現実政治の政局の上では、どうも再稼動論に押されぎみである。それほどまでに原発利権は、旧来型の政治家にとっては甘い汁なのであろう)。技術革新の進んだ火力発電への移行が進んだ東電管内では差し当たり原発なしで暮らせそうであるが(賠償問題や福島原発の廃炉に向けた作業がどうなるかという問題を孕んだ中での束の間の安定であり油断はできないが)、仮に東電管内で脱原発が実現しても、隣の静岡・浜岡原発が再稼動され万が一のことがあれば、首都圏にも住んでいられなくなるのだが。
本書のチェルノブイリ体験者のインタビュー談話は、そうした現状への反省を否応なく迫るし、その他の本書の文章・詩・演説も、結局、現在の日本の問題は、歴史の教訓、警鐘を忘れ、あるいは省みない、活かさないことで深刻化したのではないかとの反省を余儀なくさせる。
本書の巻頭言的な坂本龍一の「心に響いた言葉たち」でも挙げられる田中正造(日本で最初の公害問題と言われる足尾銅山鉱毒事件を告発した)の、真の文明は山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さざるべし、という言葉は、原発に依存しすぎたこれまでのエネルギー体制への痛烈な批判としても通用するであろう。
「もっと読みたい人のために」の坂本龍一セレクションの項には、「自然を資源や投資の対象としてだけ扱う現在の文明から、ヒトも自然の一部だという当たり前な事実に基づいた、より高度な文明のグランドデザインのためのヒントとなる本を選びました」とある。このような視点は他の編者にも共通するものと思われるし、今後、どのような政治を選び、どのような社会を造っていくかを考える上では、省みられなければならない視点であろう。
全体の中では微小な疑問点ではあるが、私がそれでいいのかな、と思った点を一つ。坂本龍一の参照した情報ソースで一点YouTubeのアニメ動画に触れられているが、時代の流れであろうか。著作権の問題を気にして(公式チャンネル以外の)Youtube動画を敬遠するなど、今や、闇米を口にせずに餓死した裁判官と同様の「愚挙」なのだろうか(その後、国会で違法ダウンロードに刑罰を課す法改正が成立し、10月1日から施行されることとなった。が、Youtube等で権利処理を経ない動画を視聴する場合にそれらの視聴がストリーミング方式であることを根拠に刑罰の対象となる受信〔ダウンロード〕とは異なるといいうるのか、それともプログレッシブ・ダウンロードという一種のダウンロードでありやはり刑罰の対象となるのかは、いまだ議論が分かれているようである)。
その点はさておき、全体としては、共感したり考えを整理したりできる良好なブック・ガイドであり、文筆集であった。(敬称略)
音楽は自由にする
音楽家・坂本龍一(1952- )が、衝撃を受けた音楽との出会いや関わり方、問題意識など、音楽を巡るこれまでの自分の半生を振り返った一冊。月刊誌『エンジン』のインタビューで語った著者の言葉をもとにした、ひとりの音楽家の個人史です。
インタビューの記事をもとにしたせいでしょうか。文章に格別の味があるといったものではありません。現在の坂本龍一が、過去の自分や出来事を回想した記憶の集積は、ある時期をクローズアップしているといったことはなく、淡々と振り返っていくのですね。文章のアクセントとして写真が多く掲載されているのは嬉しかったのですが、本書の構成や流れが直線的で、面白味に欠けるものだったのが残念。坂本龍一の音楽のテーマや核になっているいくつかのキーワードを掲げ、その視点に立って過去を振り返っていくといった、何かもうひと工夫あって欲しかった気がしました。
本書は時系列順に、次の五つのブロックで構成されています。
◆1952-1969・・・・・・初めてピアノを弾いた幼稚園の頃から、バッハやドビュッシーの西洋音楽の流れを経て、現代音楽や同時代の音楽と出会う高校生まで
◆1970-1977・・・・・・芸大の作曲科に入学した大学生から、細野晴臣、高橋幸宏と三人で結成するYMO前夜まで
◆1978-1985・・・・・・一躍、時代の寵児になったYMO時代から、映画『戦場のメリークリスマス』に参加したYMO散開前後まで
◆1986-2000・・・・・・ベルトルッチ監督の映画『ラストエンペラー』に参加し、アカデミー賞を受賞する体験を経て、ニューヨークに移住し、世界に向けて音楽を発信する二十世紀の終わりまで
◆2001- ・・・・・・ニューヨークで起きた2001・9・11のテロ事件との遭遇から、YMOの再結成、現在進行中の企画、グリーンランドで考えたことなど
なかでも、YMO初期の頃の三人の共同作業、ほかのふたりとの音楽性の違いについて語った文章が興味深かったですね。たとえば、次の件りなどに。
<基本的に、幸宏や細野さんの場合は、音楽性のベースとしてポップスやロックがある。でも、ぼくにはそれがなかった。だから、2人が「あのバンドの、あの曲のあそこの感じ、あのベースとドラムね」とか言って通じ合っているときに、ぼくだけ全然わからないんです。バンドや曲の名前を覚えて、密かにレコードを買って聴いたりしていました。>(p.124)
Playing the Piano
Playing the Piano
Playing the Pianoは、Out of Noiseと2枚組セットのアルバムです。Playing the PianoにはMerry Christmas Mr. LawrenceやLast Emperorなどの懐かしい映画音楽も入っています。Out of Noiseに収録されている''Glacier''という曲には、坂本龍一さんがグリーンランドを訪れた際にご自身で録音された海中の音など、「自然の音」が使われていて、ピアノ演奏も度肝を抜くような斬新な手法です。海外メディアからも高い評価を受けているアルバム。教授ファンなら必聴。買って損は絶対にない、名曲揃いの新作です。
PROPHET V2
プロフェット5の実機(rev.2)を所有していましたが、鍵盤のセンサーが非常に脆いので単なるMIDI音源として使っていました。またrev.2はピッチが不安定ですぐ狂います。ポリモジュレーションを使った音色でVCOのピッチが狂うと音色の雰囲気までが変わってしまい、どうしようもないので泣く泣く手放しました。
このソフトは当然ですがピッチが安定しつつ、実機と同じ音が出ます。さらに加えて、実機で不満だったスイッチ式のフィルター・キーフォローがプロフェットT8と同様な連続可変式になりました。実機だと狭い音域でしか狙った音色が出せなかったのですが、連続可変によって広い音域で思いどおりの音色が出るようになっています。この1点だけでも本物を超えていますが、実機で物足りなかったアタックが高速化しており、プロフェットだけどデジタルっぽい鋭い音色も作れます。
私自身はコルグMS20を使い倒してからプロフェットやDX-7II(これも使い倒しました)に移ったという経歴なので、アナログシンセ時代のノウハウがすべて生かせるこういった製品は、タイムマシンに乗ったような気持ちになります。プロフェットのフィルターは24db/octなので、12db/octのシンセと併用すると無敵だと思います。
残念なのは、他の方も書かれている通りのサポートの悪さですね。あと日本語マニュアルはありますが、Webにあるものは印刷物をスキャナ取り込みしただけなので、検索できません。プロフェット5のことは熟知しているのでどうでもいいですが、VSのことは未経験な上にアナログともDXとも音色作りノウハウが違いマニュアルに頼る部分も多いので、もうちょっとなんとかならないのかなあと思います。