はじまりはじまる
1972年(昭和47)に、山平和彦の「放送禁止歌」「大島節」「月経」が、文字通りの放送禁止歌になった。
そして、もうひとつの放送禁止歌が、六文銭の「街と飛行船」だ。この歌は当時、問題の歌詞に別の音を被せるという手法を取らずに、その言葉の録音部分のテープを切り取って、前後を入れ替えて繋ぎ直し、レコード化した。
ちなみに問題になった表現は「まま子」「みなし子」「小児まひ」など。
今年秋「まるで六文銭のように」によって、この放送禁止歌が、本来の姿で、CDとして再現された。
「雨が空から降れば」「面影橋」「わたしはスパイ」「夏・二人で」「無題」そして、「街と飛行船」が、六文銭のオリジナル。歳月をへたこれらの歌は、新しい解釈によって蘇った。
「街と飛行船」の復活・再現が、わたしにとっての朗報だ。
おとのば
何から何までいいアルバムです。考えてみれば、原茂さんと橋本良一さんがいないのは残念ですが、『キングサーモンのいる島』のときの六文銭のメインメンバーがいるんですから。それに、大好きなこむろゆいさんが加わって、最高のチームワークによる傑作で大満足です。私ごとですが、小室さんが深夜放送を担当していたときの「ゆい こむろのパパ、おはよう!」のコーナーが大好きでした。
さて、バッキングのサポートメンバーもおかない17曲、67分。ギター2本に4声の「おと」はとても心地よく、昔馴染みのうたも、新しくやって来たうたも、ひとつひとつが心に染み入り、心を和ませてくれます。誰かが突出するわけでなく、どの場面でも4人がみな、そこにいる。嬉しいのです。きっと、練習の手本にされそうな、そんな「あこがれ」もあります。
2009年のベストアルバムに私は選ぶのでしょうが、それでも「六文銭」には違和感があるのです。このアルバムにも収録されている「ゲンシバクダンの歌」を第2回全日本フォークジャンボリーで歌っている六文銭(そのときは「小室等と六文銭」です。たしか、小室のり子さんがメンバーとしてステージに上がっていたと記憶しています)が私の六文銭を知る最初であり、それ以来の六文銭ファンとしては、その後の「新六文銭」もそうでしたが、その違いは小さいけど明らかな気がするのです。今回も「'09」とついていますが、私にとっては、どんなに素晴らしくても六文銭として一緒にするには少しばかり違和感があるのです。
私の極めて個人的な感傷とは無関係に、とにかくいいアルバムです。余計なものがそぎ落とされて、うたと音が、こんなにも力強いものかと感じさせてくれます。なかでも「出発の歌」(「“出発”を“たびだち”と読んでくれる人はほとんどいなくなった」と小室さんがライナーノーツに書いていますが)は、これまでいろいろ聞きましたが最高のものです。
また、素晴らしいアルバムをつくって、「やっぱり、六文銭じゃないよなぁ」と何度も言わせていただきたいと願っています。
初恋
ファンの方には申し訳ないが、全然知らない人でした。YOUTUBEでたまたま見た新しい六文銭のライブで、小室等と及川恒平に挟まれていい感じで歌っていたキレイなおばさんがこの人だった。きけば吉田拓郎の最初の奥さんだったそうで、当時から名曲と言われていたという「春の風が吹いていたら」を「たくろう&けいこ」と称してデュエットしていた(ということもYOU TUBEで聞いたし知った)。
この曲も含め佳い曲も多いし、アレンジからコーラスから非常にカチッとしたつくりなのだが、それだけに特徴が乏しい。YOU TUBEで見られるライブはあんなに生々しいのにね。20歳代から30年近いブランクを経て、50歳を過ぎて歌の世界に戻ってきたのだから、いまの年代にしか歌えない「生々しい歌」をもっとレコーディングでもどんどん歌ってほしい。「幸せになれる天才」とか「かざぐるま」なんてそんなタイプの名曲に発展(成長)する可能性のある曲だと思う。「ホワンポウエルの街」など詩的な名曲だと思うが、ミキシングのせいかボーカルが奥に引っ込み過ぎて線の細さが目立ち、ここでも生々しさが足らない要因になっている。
子育ても終わり、そろそろできなかったことをまたやろうか、という世代には強烈なシンパシーを感じさせるでしょう。でもブランク明けなのだから、これが到達点じゃなくて出発点になってほしい。聞いている側にそんな気持ちにさせる、とても素敵な女性です。いろんな意味で今後に期待。いっそライブアルバムを聴きたい。
明日に向って走れ
当時はアーティストがレコード会社を作るなんて考えられなかった時代でした。吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげる・小室等、すごい衝撃でしたね。そんなフォーライフにおける拓郎の第1作です。駒沢裕城のスチールギターが随所にフューチャーされ、アコースティックな仕上がりになっております。前作「人生を語らず」より力が抜けて、のびのびした感じです。名曲「どうしてこんなに悲しいんだろう」は、「人間なんて」に収録されているアレンジと、是非聞き比べていただきたいです。「明日に向かって走れ」は My Best Of 拓郎の1曲です。
母と娘のデュエットソング
おけいさんこと元六文銭の四角佳子とモー娘。の安倍なつみのユニットによる本作は、母親と娘のほのぼのとした絆を歌った歌です。
サウンド的にはシンプルなロックンロールという感じで、モー娘。のファンの世代から、六文銭のファンだった世代まで、広く受け入れられる曲に仕上がっているように思いました。