アメリカの伯父さん [DVD]
映画の最後にでてくる「虐殺された鳩」の著者、アンリ・ラボリの話が、この映画のコメディ的構図を説明していると思う。彼の言葉で印象的なものに「重力の法則を知ったからといって重力から自由になるわけではない」というものがあったが、人間の行動の法則、それは随所に挿入されているネズミの実験から推察できるように、またジャンギャバンやジャンマレー出演の映画の断片に見られるとおり、いつも同じことをしでかしてしまう決まり切ったことなんだけど、それを理解して人間の行動を説明することはできても、主体としての人間はそれから逃れることはできない、ということである。(正や)負の刺激に条件付けされたネズミの行動を見て、我々人間はガリバー的視座からおもしろがることができ、そこに法則を定立することができる。それは行動学から人間の日常行動を見た場合についてもいえること。そうした時、我々はコメディとして、つまり他人事として見て楽しむことができる。しかし、さて自分自身のことになると、やはりおなじような状況になってしまうものなのだ、ということだろう。これは「夜と霧」についても同様で、あの作品は、ナチス批判でもユダヤ擁護でもなく、また感傷に浸るものでもない。単に、人間というものはこうしたことをしでかしてしまうものなのだ、ということを語っている。そして、おそらくまた同じようなことをいつかどこかでしでかしてしまうのだろう、ということを示唆している。こうしたあたりの作品の構造的おもしろさがアランレネ作品の魅力といえると思っている。
ただし映画としては分かりにくい。疲れるので3日に分けて見た(^_^;)