悪魔のパス 天使のゴール (幻冬舎文庫)
「これがサッカを描いた小説だと言えるものを書こうと思って書いた」
と本人が語っているように、小説の最後のユベントス戦は、実際にスタジアムで観戦していると錯覚してしまうくらいの緊張感と迫力がありました。
興奮とカタルシスという観点から物語を書くことの出来る作家で村上龍ほど
素晴らしい作家を僕は知らない。
悪魔のパス 天使のゴール
一応、長編ではあるがストーリーはそれほど濃くはない。
村上のサッカーに対する薀蓄を読む本だといってよい。
試合の描写はかなり細かく、サッカー経験者にしか実感できないような部分もある。
選手も実名を使っているのでサッカーを見ない人には読みづらいだろう。
しかしこの本の裏の顔はヨーロッパ紀行本なのだと思っている。
フィレンツェ、ローマ、ナポリ、マドリード、パリ等ヨーロッパの歴史を感じさせる街の描写が挿入される。
どの街の男も女も土地のクラブを愛し、勝負に一喜一憂する。
サッカーが文化として浸透していることがよくわかる。
村上の飾らない書き口もすっきりしていて楽しく読める。
ああ、イタリアに行ってピザ食って飲んでサッカー見たい。
旅心をくすぐる本であった。