ロンドン塔は、
ロンドンを訪れる観光客ならば誰でも一度は足を運ぶ場所であろう。
或いは
ロンドン塔には行った事は無いけれど、
幽霊話で知っている…等という方もいるかもしれない。
私も嘗て「ビーフ・イーター(
ロンドン塔の衛士、案内人)は退役軍人である事から余り口にはしないものの、実は
ロンドン塔で気味の悪い経験をした人が沢山いるらしい」…等といった話を聞いた事がある。
そんな噂が実しやかに流れる程、そして当たり前に語られる程に
ロンドン塔の歴史は凄惨さに満ちている。
そして、その900年に及ぶ長い歴史を丁寧に辿ったのが本書であり、非常に読み応えがあった。
本書は先ず、簡単な「
ロンドン塔」案内から始まる。
各塔の景観や歴史、見所等が満載なのでガイドブックとしての役割も果たしてくれるのではなかろうか。
そして愈々本題に入る訳だが、居城としての華やかさを極めた時代から牢獄へと変貌した経緯についても解り易く纏めてあり、同時に
ロンドン塔にまつわる英国史も全てお浚い出来る流れになっているので入門書としても最適である。
勿論、近代に於ける災害ー例えば
ロンドン大火や宝物館での盗難事件等についても触れている。
正しく「
ロンドン塔全史」を網羅した作品とも言えよう。
尚、冒頭に
幽霊話等に触れてしまったので誤解のないように断っておくが、本書は決してこうしたおどろおどろしい話を書き綴ったものではない。
無論、処刑の歴史や壁に残された刻字等に関してはかなり詳しく書かれてはいるものの、非常に冷静な目で「一つの歴史的事件」として捉えているのだ。
変に読者の好奇心を煽ったり、謎めいて暗示したりという事は皆無であり、淡々と歴史だけを語っている。
その一方で、愛想の無い著作かと言えばそうではなく、著者の
ロンドン塔に対する愛着が伝わって来るようでもあり、「読み物」としても非常に面白いのが印象的であった。
更に、これはあくまでも付属的なのかもしれないが、漱石の『倫敦塔』にも随時触れているので、漱石を勉強している方にとっても結構参考になる部分が多いのではなかろうか。
ロンドン塔についてはガイドブック等でも詳細に紹介されているので「敢えて読むまでもない」と思う方もいるかもしれない。
だが、それでも尚、改めて推薦したいと思う。
何故なら、本書は著者自身が「案内書でも歴史書でも回想記でもない」としているものの、寧ろ、その全ての良い所を集めた著作と言っても過言ではないからである。
是非とも「今更…」等と思わずに、御一読頂きたいと思う。
低予算映画の帝王にして、
ハリウッドに数々の人材を送り出した、コーマン先生の代表作3作品です。
どれも明らかに金がかかっていませんが、適度なアクション・お色気が必ず含まれており、安心して楽しめます。また、
アカデミー賞を受賞した俳優(シェリー・ウインタース、レイ・ミランド)ののびのびとした演技もみどころです。ちなみに「血まみれ〜」には無名時代の
ロバート・デ・ニーロが出てます。
同じコーマン&プライスの『
赤死病の仮面』と同時期なのか、
ロンドンの同じスタジオで撮影したと思しきよく似たセットや
美術。ただしこちらは白黒で、何やら急場の企画を低予算で早々に
仕上げた感がありありとしているが、それでもさほどヤスッぽさを感じさせないムーディな演出と撮影はさすが。勉強になります。
『
バットマン リターンズ』のオズワルド・ペンギン、ロマン・ポランスキーの『
マクベス』にも引用(?)されたお馴染みの悪役が主人公の、
シェイクスピアの『リチャード三世』…というより『マクベス』的因果応報のストーリー。格調高い悲劇を期待するとガッカリするかもだが、ひねくれて邪悪な不具者という、あちらの人がリチャードに持つ原イメージをそのままに、プライスのいつもの大芝居で泥絵風の歴史邪劇として
仕上げたなかなかの一本。
それにしても、悪王の遺骨が駐車場の下に埋まっていたというのは実に何とも因縁めいた話。馬一頭を求めたら無数の自動車に押し寄せられたというわけか。これもまた歴史の教訓、まさに
シェイクスピアも喜びそうなドラマテイックな末路ではある。報道に触れ、ふと怪奇短編『
シェークスピア奇譚』を連想した。
DVDも出ています。
入門書です。 文章は読みやすく、英国史にも世界史にも素人で、かつ、強い興味もない私でも、
ロンドン塔に観光に行った際の記憶を辿りながら、読み物として楽しく読みきれました。
ロンドン塔といえば、血で血を洗う英国王室のの歴史を、怖いもの見たさに覗く感覚が刺激されますが、妙に読者のネガティブな興味をそそるような書き方でなく、あくまで事実として認識されている悲劇を説明していて、気持ちよく読めます。ただ、図説というわりには文章主体で、図は極少なく、絵画もモノクロです。