ニュースなどからうすうす感じてはいたが、
おおくの地震は断層がすれて起きるとあった。
断層の長さと、ずれの大きさによってマグニチュードが決まるとも。
断層のおおもとは、日本列島が東西から受ける圧縮の力。
だから多くの断層は、規則的なずれかたを示している。
プレート境界のずれが年数センチのオーダーでこれがAA級。
内陸の
活断層は、10分の1ずつオーダーを落として、A級・B級・C級などに分類される。
それぞれの断層は、地形や地層にずれを記録していて
同じ方向に、固有の間隔で(100年とか1000年とか)動くらしい。
経験に支持された仮説とはいえ、これぐらいの知識があれば
素人としては満足だ。
2012年秋に、環境省の外局として原子力規制委員会が発足し、経済産業省とは切り離した組織で、断層
調査や安全基準の整備ができるようになった。さらに、原子力規制委員会によって2013年6月に強制力のある省令レベルの「規制基準」が設けられた。従来の内閣府付きの旧原子力安全委員会の「審査指針」や「審査の手引き」は、外部に対して強制力を持つものではなかったのである。著者は、地震・津波に関する規制基準の検討チームとして新基準の作成に加わっている。
意外だったのは、2006年に旧原子力安全委員会が定めた
耐震設計上考慮しなければならない
活断層の定義は、「後期更新世以降(12〜13万年前以降)の活動が否定できないもの」であって、それ自体は妥当性のあるものだった、ということだ。つまり、定義自体に問題があったというより、ルールが遵守されていなかった方に問題があった。そして、そういう力が働いた背景には、従来は
活断層調査は立地審査のときではなく、場所が決まったあとの
耐震審査で行われる項目だったということがある。しかも、その
調査は事業者だけが行い、第三者による検証は行われていなかった。しかも、審査体制も、事業者が提出したレポート内容のチェックだけだった。そもそも、1995年の阪神淡路大震災前は、
活断層の地震が原発に与える影響が軽視されていた可能性も指摘されている。実際、
活断層で地震が発生する周期は数前年から数万年と長いので40年ほどしかない原発の運転期間がその周期にあたる可能性は高いとはいいきれないし、原発は元々丈夫に作られているという認識もあったようだ。
活断層における過去の審査のずさんさは、マスコミでもさかんに報じられている通りで、本書においても原子力規制委員会でのこれまでの議論を紹介しながら、敦賀原発、志賀原発、島根原発の
調査結果と審査状況を引用し、具体的な問題点の指摘が行われている。学者らしいまじめで固い書きぶりの行間から、生々しい実態が見えてくる。
著者は、「予防可能性」と「回避可能性」が有る事象なのか無いものなのかをきちんと判断すべきであって、
活断層は調べることでその近くに作らないという形で回避できるものなのだから、単に確率の大小だけで判断すべきではないというような意見も述べている。