全編に亘り鮮やかなラテン系の色彩で撮られていて、実に画面が美しく、芸術家を主役にした映画しては珍しく、いい意味で通俗的な演出なので、観ていて眠くなる事は無かった。
登場人物にディエゴ・リベラ、シケイロス、トロツキーといったそうそうたるメンバーを見つけ鑑賞を決意。フリーダ・カーロの作品自体は昔から素人臭くてどうも感心しなかったが、このような伝記映画の素材としては分りやすいイラスト風で最適だと感じた。
ディエゴ、フリーダ、トロツキーの配役はほぼイメージ通りで適役であったが、シケイロス役のアントニオ・バンデラスがどうも若造過ぎてミスキャスト、ディエゴに勝るとも劣らぬ濃いオヤジキャラでなきゃ。トロツキー暗殺にはシケイロスも一枚噛んでいたという話しが全く無視されていたのも残念。
でもフリーダがトロツキーともできていたってのは知らなかったけど、本当?個人的趣味から言えば、詩人アンドレ・ブルトン、タブロー画家ルフィーノ・タマヨ、トロツキーの個人秘書にして論理学者のハイジェノールトも登場すればもっと嬉しかったけれど、それは無いものねだりでしょうな(
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ディエゴ役の人、どっかで見た顔だなあ、と思っていたら、はたと思い出しました。『スパイダーマン2』に出ていた、オクトパス博士ですよ。懐かしい!
メキシコ現代
美術に感心のある人には必見と言って良いでしょう。
ジャングルの木々が茂る背景に猿と太く繋がった眉のフリーダの絵を見たのが最初の出会いだった。ある雑誌の特集だっただろうか、その強烈な個性と絵について書かれていたと思うのだが、「強烈な個性」という言葉以外、詳細について忘れてしまっていた。フリーダの映画が公開され、興味を再度持ったところ出会ったのがこの本だ。フリーダの絵をあまり見たことはなかったが、この本に綴じられている作品を観ると、「濃厚な血」の匂いを感じる、というか、ある種の衝撃なくしてそれらを観ることはできない。
リベラやトロッキー、イサム・ノグチといった時の文化人芸術家を魅了したのも、彼女の強烈な個性、自意識によるところが良くわかる。その一見華やかそうに見える遍歴の裏に、何度となく血を流すフリーダ姿が浮かび上がってくる。今や
メキシコを代表する女性の画家として有名な彼女だが、その衝撃的な絵の数々は彼女の夫リベラに対する愛の渇望、叫びであり、強烈な個性を持つフリーダが同じく強烈な個であるリベラとの愛を生きる上でどうしても不可欠なものだったのだ。
本書のなかで、著者は
メキシコ旅行を通して、そんな彼女の生涯の軌跡を辿る。とても読みやすく、彼女の絵を鑑賞するとりかかりとしてだけではなく、一人の女性の生き方の物語としても楽しめる一冊である。