妄想とも現実ともつかないような言葉を次々に紡ぎだす男・山沖の行方を
火村と
アリスが協力しながら探し出す人気作『ジャバウォッキー』
美しい英国式庭園を舞台にした宝探しゲームの顛末を描く『英国庭園の謎』
火村が"傷ついた"という奇妙な事件について
アリスが語る『
暗号を撒く男』
ロックバンドのギタリストが残した"Y"のダイイングメッセージをめぐる『あるYの悲劇』
一枚の紙幣が被害者の意思を離れて動かしがたい証拠となった『比類のない神々しいような瞬間』
火村シリーズといえば印象的な
暗号が数多く登場するシリーズではありますが、
その中から(すでにビーンズ文庫版に収録されているものを除く)
作者選りすぐりの5編が収録された
暗号ものの選集です。
事件を解決へと導く
暗号もあれば、逆に混乱させるような
暗号もあり、
死に際に残されたもの、あらかじめ作られていたものなど
さまざまなバリエーションが一度に楽しめるおいしい一冊だと思います。
ビーンズ文庫版のうれしい点のひとつでもある作者によるあとがきには、
ミステリファンならうんうんと頷いてしまうであろう
「
解読する過程が意外なものであば、結末は必ずしも意外なものでなくてもいい」という
暗号もの、ひいてはミステリそのものへの作者の見解が書かれていてこちらも必見。
麻々原絵里依の手による挿絵も作品の雰囲気を壊すことなく調和していて、
少女小説レーベルながら完成度の高い傑作短篇集だと思います。
唯一残念な点といえば、これは前作の『密室の研究』のときにも感じたのですが
初期の長編作品がビーンズ文庫版になっていないために
編集者の片桐、女流推理作家の朝井などのレギュラーキャラクターと
火村・
アリスたちとの関係がわかりにくいところでしょうか。
また火村が犯罪をどれほど憎み、どれほど過去の殺意に苛まれているかなども、
いずれも過去の長編に深い描写があるために
ビーンズ文庫版だけしか読んでいない人には「?」かもしれません。
キャラクターや設定はあくまでもミステリのエッセンスに過ぎないため、
謎解きをメインに楽しむには重要なポイントではないかもしれませんが、
物語性も楽しみたいという人にはその点が不親切かなと思います。
今後もビーンズ文庫での展開があるなら
シリーズ初期の長編もぜひビーンズ文庫化してほしいです。
設定は古くなっても、謎を解く楽しみはけして古びることはないのですから。
本格推理小説家、有栖川有栖と綾辻行人合作の本格推理ドラマ。実際に自分が推理して謎を解くことができるように、本編と解決編を分けて収録してあり、その上タイムテーブルや事件の証拠品などをまとめた項もあるという優れものDVD。
しかしこれまた内容が半端でなく面白い。推理の面でも彼らの小説を彷彿とさせる凄い本格ぶりで難しくワクワクするのだが、コメディ面も最強なのだ。解決編で起こる“奇跡”がそれで既に出落ちなのである。「これが、奇跡!」もうたまらなく笑いがでる。事件の結末を知りたいという欲求以外に、もう何度も解決編ばかり見てしまう程。
推理小説好きだけでなく、お笑い好きの方にも是非見ていただきたい一品かもしれない。
有栖川有栖先生の原作は未読なのですが、
大変面白く拝見しました。
内容については、本作はミステリードラマですので、
何を書いてもネタバレになりそうなので割愛させて頂きます。
若き
香川照之が扮する、主人公江神のエキセントリックなキャラが良いですね。