思うに一日、一日はしょうもないことの繰り返しですぎていく。起きて、食べて、寝て、起きて、食べて、寝て。映画やドラマののように、ドラマチックな展開というのにはまずお目にかからない。もしあなたがそういうものを、つねに求めていたらがっかりのしどおしであろう。でも人生なんてこんなものと思ってしまえば、これはこれで案外楽しいものである。だって考えてみてほしい。映画のような事がしょっちゅう起こることを。あれは2時間だからいいのであって、ひっきりなしにあんなことが起こったら、楽しいというよりもげっそりする。どうしようもない人生でもべつにいいんじゃない。さて、前置きが長かったが、チャールズ・ブコウスキーである。彼の作品はちょっと前にどかどかと翻訳が出版されたが今は少し落ち着いたようである。それにしてもあのブームといえるような状況は何だったのであろうか。その内容からしてそんなに一般受けするような作家であるとは思えないのだが。もちろんブコウスキーは素晴らしい作家であるし、長く読みつがれるべき作品を数多く書いている。これが日本人によくある一過性のものでないことを祈るのみである。ある意味、かれの作品はどれを読んでも同じである。そう、それがブコウスキーなのだ。それもどうしようもない日常がテーマとなっている。どうしようもない日常を描くこと。これは誰でも出来ることではない。作家とはいろいろな誘惑にさらされるものである。たとえば、地位とか名誉とか、高尚なテーマとかに。だからこそ一貫してこれを描ききるブウコウスキーは重要なのである。この作品集は新聞連載がもとになっている。とはいっても、もちろんいつものブコウスキ-節全開なので安心を。しかし、こんなものを新聞に載せるなんて・・おそるべし、アメリカ。ブコウスキーのものは原書で読むのが一番である。難しい構文とかは、使っていないので読みやすいはずである。もっとも卑語や俗語のオンパレードなので別の苦労はあるけど。
ブコウスキーの作品で、初めに読んだのがコレだったんですが・・・そのときの感想は、「なんじゃこりゃ」。カバーや挿絵のアメリカ的な雰囲気に魅かれ、「ハードボイルド」「
探偵」という言葉を見て、ロバートBパーカーみたいなのを思い浮かべてた私は、この本の意図があまりつかめなかったのです。
一応その他の作品をいろいろ読んでみると、この人がどんなことを訴えているのか、少しずつ分かるようになってきました。その後にこれを読み返すと・・・これが著者の遺作であるということも念頭に置いて読むと、より著者の人生観が伝わってくると思います。
初めにコレを読んで、ブコウスキーを誤解しないで欲しい。