前作 Nostalgia とはうって変わって、アダルトな雰囲気のポップなアルバム。前作のメロディアスなハードロックを期待するとがっかりするだろう。北欧らしい透明感のある爽やかな曲をやっているが、肝心のメロディが弱く、あまり印象に残らないのが残念だ。
仏ナイーヴ・レーベル恒例の年末バーゲンセット、2012年の目玉はヴィヴァルディの宗教音楽集である。2枚組1アイテムを含む5作品を簡素なスリップケースに収容。オリジナル通りの分厚いブックレットも付属している。
CD1/CD2:
Vespri Per L'Assunzione Di Maria Vergineヴィヴァルディが著わした「聖母被昇天のための晩祷」に向けた楽曲群から、譜面が現存するものを集めた復元作。ナイーヴのカタログ中でも屈指の名盤である。歌唱陣では「ニシ・ドミノス RV608」を歌うサラ・ミンガルドに注目。演奏はアレッサンドリーニ指揮コンチェルト・
イタリアーノ。録音は2003年7月、
ローマ・テアトロオリンピコにて。全23曲68トラック、収録時間69分35秒+76分25秒。
CD3:
Vivaldi: Mottetti6編のモテット集(RV629、631、633、623、628、630)を収録。歌唱はソプラノのアンケ・ヘルマン他。演奏はデ・マルキ指揮アカデミア・モンティス・レガリス。録音は2001年10月、ピエモンテ州モンドヴィの楽団本拠地にて。全6曲24トラック、収録時間69分35秒。
CD4:
In Furore, Laudate Pueri e Concerti Sacri標題曲「いと公正なる怒りの激しさに RV626」他を収めたモテット集。人気の若手ソプラノ、サンドリーヌ・ピオーの美しい歌声が魅力的。共演はダントーネ指揮アカデミア・ビザンティーナ。録音は2005年6月、北仏ティエラッシュ地方のサン=ミシェル修道院にて。全5曲21トラック、収録時間62分56秒。
CD5:
Gloria2曲の「グローリア」他1曲を収録。RV588ではコントラルトのミンガルドをフィーチュア。共演はアレッサンドリーニ指揮コンチェルト・
イタリアーノ。録音は2009年3月、クレマのサンベルナルディーノ教会にて。全3曲27トラック、収録時間67分01秒。
CD6:
Nisi Dominus / Stabat Mater本セット中では唯一のフレンチ・アンサンブルを起用した作品。「ニシ・ドミノス」「スターバト・マーテル RV621」他1曲を収録。カウンターテナーにフィリップ・ジャルスキーを配し、共演はスピノージ指揮アンサンブル・マテウス。録音は2007年7月、ブレストのサル・シュルクーフにて。全3曲19トラック、収録時間41分59秒。
内容はすでに定評のあるものばかりで、演奏も歌唱もたいへん上質だが、制作の背景という意味ではCD6がやや異質。というのも、他の作品は
イタリアとの共同制作による「ヴィヴァルディ・エディション」で構成されるのに対し、この盤のみ純
フランス制作である。
「ヴィヴァルディ・エディション」はナイーヴが(設立時に吸収した)OPUS 111レーベルから引き継いだシリーズで、トリノ国立図書館に現存する手稿譜の全曲録音を目指すもの。したがって楽曲の重複は無いことになるが、本セットでは上記の理由により「ニシ・ドミノス(主が家を建てられるのでなければ)RV608」が2つの演奏で含まれる。
どちらも名曲名演であり、特にCD2のミンガルドは、あの
アンドレアス・ショル盤に匹敵する名唱と思う。
バロック時代の宗教曲というと、バッハの諸作のような折り目正しさを想像しがちだが、ヴィヴァルディの作品はどれも血の気が多く情熱的。歌曲の合間に挟まれるシンフォニア(器楽曲)も生気に満ちあふれている。日本では合唱曲や古楽曲の人気は今ひとつのようだが、これを聴かずに済ませるのはもったいない。
なおナイーヴ作品の特徴として、録音の鮮度の高さも印象的。5作品すべてが2000年代の録音というところもポイントが高い。限定セットなので、買い漏らしていた方はお早めに。