日本の映画音楽家には、実は、世界に通用する凄いスコアを書いている人がたくさんいる。
世界中の映画で、こんなにもメロディアスな音楽を映画に付ける国はあまりないからだ。
だから黛敏郎や坂本龍一のように、
ハリウッド映画にも起用される音楽家も出ているのだ。
本CDの眞鍋理一郎は、知る人ぞ知る存在の映画音楽家だが、手がけた映画の本数が実に500本を超えるというから驚きだ。
本CDはその中からわずかに21作品が取り上げられたにすぎない。
この人のスコアを映画史上、最初に映画ファンに印象づけたのは、恐らく大島渚の『日本の夜と霧』だろう。本CDも同作で幕を開ける。
もともとプログラム・ピクチャーという日本映画の制度の中で、多いときにはひと月に2本のハイペースで量産せざるを得ない創作環境にあって、印象的な作品もいくつか残している。
特徴的なのは、浦山桐郎監督の晩年の主要4作品を手がけたことだ。『青春の門』『青春の門・自立篇』『太陽の子・てだのふあ』、そして東映アニメーション第一弾となった傑作『龍の子太郎』だ。
残念なことに本CDでは『青春の門』以外の3作しか収録されておらず、個人的には氏の最高傑作であると考える肝腎の『青春の門』だけが収録されていない。これは大きな選曲ミスだろう。
本CDは『ゴジラ対ヘドラ』からテーマソングの「かえせ!太陽を」で幕を閉じる。
ブックレット型ライナーには2000年5月に氏が加筆・訂正を加えた本人へのインタビューに基づく解説と、全作品のリストが付いていることが貴重だ。