著者のメソッドは一見、目の前を通り過ぎる慌ただしい日常のシーンとは何ら関係ないようでいて、じつはそこにおける“主体たる自分”を変えるためのみごとな“王道”となっている。
本書の特色として、著者も修行する武術のメソッドが活き、“身体を使う”“とにかく行動する”“すべてを意識的に行う”といったことが繰り返し述べられ、強調されている。なぜか。
それは、現代人は「近代」という名のカルト(ある勢いを持った集団)にかき抱かれ、ぼんやりとした眠りの裡にあるからだ。夢から覚め、現実の世界をきちんと見据えるためには、覚醒することが必要だ。そのためには“身体を使い、行動のすべてを意識的に行う”ことが何より大切なのだ。
視点が変わり、自分が変わることは素晴らしい体験である。「私はダメじゃないし、こういう本はいらないわ」と思う人にこそ必要な本だろう。
失恋したとき、勉強や仕事で自信をなくしたとき、人生の方針に何となく不安があるとき、この本はお勧めです。日本のこともよく知って、心のやさしい
フランス人が数々の助言をしています。でも、お説教臭いところがまったくなく、10代から20代の若い人達にはとくにすんなり受け入れられるでしょう。
フランス流の洗練された生き方は何かということを知ることもできます。日本で出ている多数のこの種のものが合理的な生き方を重視するのに対し、アーティストの著者は心情をとても大切にしています。本書を読んで、私はパスカルの有名な言葉を思い出しました:Le coeur a ses raisons que la raison ne connait point (心情には理性には分からない行動原理がある)。理屈ばかりで生きていったら、人生いつか挫折しますし、情熱ばかりで過ごしたら、失敗の連続です。どちらにも偏らない均衡のとれた生き方を本書は示していますが、まずは心情の大切さを著者は優しく訴えています。