もらい泣き
人間っていいな、と思えるようなごく短い感動話を集めた本。著者がいろいろな人からきいた話を再構成してエッセイ風につづっているのだが、すばらしい話材を見事に作品化しえているなという感じがした。個人的に実際に「もらい泣き」したのは、ネコ好きなら必ずグッとくるであろう「女王猫」の話などごくわずかだったが、しかしどのストーリーにも心をふるわされた。すべて読み終えてから「あとがき」にある以下の感想を読んで、とても共感した。
「とにかく大勢から話を聞いて書いたにもかかわらず、あたかも、たった一人から、長い長い話を聞き続けた、という不思議な感覚もある。ときには私自身の体験も書いているのに、それすらも、その一人から聞かされたかのように思えてくる。その一人こそ、誰の心にも共通して存在する、「良心」なのかもしれない。そんなふうに思うだけで、私はなんだか、希望を得られたような気がするのだ。」
蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH【初回限定版】 [Blu-ray]
TVシリーズからのキャラの成長。新たな人間ドラマ。これまでの世界観を崩すことなく練られたストーリー。
ファフナーファンとしては心躍る要素満点で大満足。
CGでリファインされたファフナー(ロボット)もすごく滑らかに動いて迫力満点でした。
ただし90分でやるにはやや詰め込み過ぎだったかな…。
蒼穹のファフナー新参者には設定やキャラが多すぎて入りづらいかと思いました。
この作品が気になっている方は是非TVシリーズからの流れで見て下さい。
個人的には髪を伸ばしたカノンにグっときました。
マルドゥック・スクランブル 圧縮【期間限定版】 [Blu-ray]
原作未読です。
子供らしい焦燥やある種ファンタジー的なトラブルではなく、深刻なトラウマであろう悲惨な過去を抱えた少女の心理変化の描写がとにかく丁寧な印象を受けました。
自閉が解消されたらからといって解決ではなく、また新たな盲信や依存が生じてしまったりする心理は一つ一つ納得してしまいました。
そういった心理描写が映像化に際して一番大切にされた部分ではないかなとも思えます。
もちろんその点は原作の方がすごいのだろうと容易に想像できましたが、むしろ約1時間のなかに大事な描写を残しつつ、きっちり動的なシーンも盛り込んでいるのはかなりすごいと思いました。ちょっと短いのが惜しい気もしますが、この尺で描く条件なら間違いなく高いレベルにあると思います。
本商品はDisk一枚に劇場公開版と完全版が収録されています。ざっとしか見てないですが、完全版はより直接的な描写になっています。また、数シーンほど細かい描写が追加されているところがあるようです。完全版から先に見ましたが、完全版のほうがしっくりきた感じはします。あくまで補足的なものがメインで、内容にそれほど大幅な変更があるわけではない…と思いますが。
それと、原作未読の人間が言うのもなんですがこの作品はかなり重めな内容も出てくる話ではあると思いますので、ご存知ない方は少しだけご注意ください。
天地明察(上) (角川文庫)
09年11月の単行本の文庫化で,『第31回吉川英治文学新人賞』と『第7回本屋大賞』の受賞作.
今回の文庫化にあたり上下巻へと分冊となり,また加筆と修正が加えられているとのことです.
全六章の半分,三章までを収めた本巻は,いかにも下巻のための上巻の感じではあるものの,
それは決して『過程』などで片付けられるものではなく,多くの人たちとの出会いにはじまり,
挑戦,挫折,復活と,先へと繋がる主人公の『下地』が練り上げられていく様子がうかがえます.
そんな主人公の少しどぼけた感もある様子は,堅苦しさのない穏やかな文章もあり好印象で,
作品へと引き込まれていくのと同じく,失敗や成功にも思わず感情が入っていってしまいます.
時代小説というより,一人の人間を綴った作品で,この巻だけでも結構な様子が描かれますが,
それでいて妙な暑苦しさを感じさせないのは,物語はもちろん主人公の魅力によるものでしょう.
また,そんな彼の周り集まる人物にも惹かれ,ほのかに漂う恋の雰囲気もほどよいアクセントです.
このあと,いよいよ下巻から大きく動き出すようで,この男の人生がどのように進んでいくのか,
これ以外にも,未だに見ぬ好敵手の大きな存在,恋の行方と,続きが気になって仕方がありません.
OUT OF CONTROL (ハヤカワ文庫JA)
収録作品は以下の7つです。
「ス7タンド・アウト」(冲方丁公式読本)
「まあこ」(異形コレクション 妖女)
「箱」(異形コレクション 蒐集家)
「日本改暦事情」(冲方丁公式読本)
「デストピア」 (野性時代 2006年12月号)
「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」(SFマガジン創刊50周年記念特大号 Part.II 日本SF篇)(年間SF傑作選 結晶銀河にも収録)
「OUT OF CONTROL」(ユリイカ 2010年10月臨時増刊号)
さすが冲方丁だけあって高いレベルの短編が揃ってますが、
個人的には「まあこ」が断トツで面白かった。
少女人形(ぶっちゃけダッチ○イフ)と、その人形の髪を整えることを依頼された美容師のお話なんですが、これがもう怖いのなんの。物語が進むにつれて皆どんどん狂っていきます。人形も怖いし人間も怖い。しかもとことんまで行き着いてしまって、まぁこれも愛の形だよね、と思ってたらラスト一行で「あちゃー」って感じ。年間ベスト級のホラー短編でした。
他にも色々と良い作品がありますんで、「冲方丁ってどんなもんよ?」という初めての方も、「いい加減アノニマスだせよ!」と飢えてるファンの皆さんも、どうぞ手にとっておくんなまし。ハードカバーを経ずに文庫サイズで発売されたというのも私としては好印象。