東京ふつうの喫茶店
サテン。スタバやエクセではなく、サテン。茶店で暇つぶしに読むのもいいし、この本を片手に茶店巡りをするのもいい。茶店で読書がもっとも贅沢な時間の使い方だと思うなら、泉麻人のエッセイにちりばめられた珈琲への愛やうんちくの面白さが楽しめるだろう。
昭和切手少年
筆者より、少し遅い時代に生きていますが、もちろん切手を集めていました。
イズミ少年の目を通して、あのころを疑似体験できました。
多趣味な筆者は、少ない情報を多様な角度から仕入れており、
趣味にかける熱意が伝わってきます。
切手収集の経験がある方は、イズミ少年と同じように、
図柄を通じた時代背景や個人的な出来事などを、
容易に思い出すことができるでしょう。
同じ趣味を持つ、みうらじゅん氏との対談から、
高度成長期の少年達の一般的な行動を読み解くことができました。
東京考現学図鑑
東京について多く執筆しているコラム職人・泉麻人が昭和初期に活躍した今和次郎(こん・わじろう)と吉田謙吉の仕事を現代風に再編集した一冊。
書店で装丁の美しさにやられて購入!
こういう内容は学術的で堅苦しくなりがちだが、そうではなく気軽に読める本に編集されているところはさすが職人・泉麻人。
いま流行りの古い写真をまとめた本などからでは絶対に読み取れない当時の市井の人びとの様子がわかって面白い。
当時彼ら(今と吉田)が行っていた調査レポートを、銀座、浅草、本所深川、阿佐ヶ谷…とエリア別に泉麻人がやさしくナビゲートしてくれているので、街についてのコラム集としても楽しめる。
巻末に収録された豊富な図版を眺めるだけでも一読の価値があると思う。思わずうっとりしてしまった。
関東大震災からの復興の様子を記すために始めたという“考現学”。
先の震災で心を痛めた日本人は多いと思うが、この本で取り上げている関東大震災後の復興の記録に、未来に向けてのメッセージが隠されている気がしてならない。