紫電改のタカ (1) (中公文庫―コミック版 (Cち1-1))
小学校時代、「少年マガジン」に連載されていたものを読んで感銘を受けた作品。紫電改は窮地に追い込まれた日本空軍が最後の切り札として投入した戦闘機。軽くて敏捷性には優れるが、反面、防御力は弱いという、いわば操縦士の命を軽視した特攻精神の産物である。
紫電改による空中戦なども描かれるが、基本は反戦思想である。戦闘機として紫電改を選んだ点にもそれが良く現れている。滅び行く運命を諦観を持って受け止める主人公の澄んだ瞳が印象的である。本土に残して来た恋人との心の触れ合いも胸を打つ。しかし、戦後15年程でこうした反戦思想を織り込んだ作品を少年誌に連載した作者も凄いし、それを許した出版社も凄い。ちょうどこの頃、「私は貝になりたい」も「少年マガジン」に掲載されている。当時の出版社の良心を感じる。
少年時代の私にとって、「ちかいの魔球」や「あしたのジョー」よりも大きな影響を与えた思い出深い作品。
1/72川西 N1K2-J 局地戦闘機 紫電改
箱開けたとき「うわっ、 パーツ少なっ!」と思いました。同じ値段のシーハリアーの半分以下のパーツ数でした。ですが、ハセガワにしては珍しく凹モールドだったので、塗装すると結構リアルに作れます。値段も手頃なので「試しに作ってみようか」という人も買って損は無いと思います。
御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)
御手洗潔は長篇だけでなく、短編でも楽しめる。あの、ちょっと芝居がかった古めかしい丁寧語。彼のセリフ回しが私はなんともいえず好きなのです。一般の人から見ると変わり者、奇人の部類にはいるのでしょうが、その風変わりな性格に魅入られて離れることができない石岡くんの気持ちがわかるような気がします。
『数字錠』では密室状態での殺人が起こり、関係者には全員アリバイがある。見事な推理で犯人を追い詰めるものの、事件の解決を素直に喜べない御手洗さん。彼の優しさが垣間見える一編です。ちなみに、この中で正式に「私立探偵・御手洗潔」が誕生したそうな。
『ギリシャの犬』はまさに御手洗さんの独壇場。隅田川上で誘拐犯を捕まえるのにノミやトンカチ、バールを持ってこいと言い残し奔走します。残された石岡くんや御手洗さんを良く知らない刑事がその言葉をにわかには信じられないのも良くわかる。
個人的には『紫電改研究保存会』が好きです。御手洗さんは最後にほんのちょっと登場するだけなんですけど、この奇妙な話のオチがまさかそんなことだったとは。。。と短いながらもなかなかひねった話でおもしろかったです。
短編集ということで、4つの御手洗さんが味わえるようなちょっと得した気分になる1冊です。
NHK特集 紫電改 最後の戦闘機 [DVD]
先日、愛媛県 馬瀬(ばせ)山頂公園にある「紫電改展示館」に行ってきた。
私自身は5回目の訪問。
今回は友人を連れての訪問だった。
32年前に目の前の宇和海の海中から引き揚げられた紫電改。
当時の姿をなるだけ残したいとの希望なのか、
戦中の製造元、今は「新明和」でピカピカにレストアするのではなくて、弾痕、曲がったプロペラなど
「傷跡」を残したレストレーションが施されている。
世界に数機しか現存しておらず、
戦後接収された程度のいい機体はフロリダの海軍博物館、ワシントンDCのスミソニアン博物館には
新品のような機体が展示中である。
しかしながら、当時の搭乗員の家族への手紙やら引き上げ時のVTRなど貴重な資料はここにしかない。
当ビデオは引き上げ前後の事情を中心に据え、
当時の関係者のインタビューを交えて、「紫電改」の姿を浮かび上がらした
貴重なDVDであると思う。
生き残りの隊員諸氏、交戦したグラマンF6Fパイロット、墜落し着水を目撃した主婦やらの生々しい証言が興味深い。
DVDの画質は全体に色が薄く、あまり良くないが、十分、鑑賞に耐えうる。
何と言っても「343航空隊」の発案者であり、
基地総司令官の「司令」であった故「源田實(げんだみのる)」元海軍准将が
じきじきにインタビュアーに答えている姿に驚かされる。