絶滅食堂で逢いましょう―なぎら健壱が行く東京の酒場・食堂・喫茶店
『夕べもここにいた!』が東京の居酒屋を紹介したものならば、こちらは食堂を中心に喫茶店、酒場なども対象にした本。
紹介されているのは25店舗。こうしたのを読んだら一軒ぐらいは実際に行ってみようと思うのですが、今回は人形町の「来福亭」かな。あとは森下の「はやふね食堂」なんかも。
《こういう場所で食事をすると、なぜかスポーツ新聞を読みたくなる》とか《こうしたカウンターには、何故かカレーやハヤシなどがよく似合う》なんていう写真のキャプションもいい感じ。
あと、お店の人がいい顔しているのが印象的。そういえば、多くのグルメ本って、人の要素を捨象しすぎですよね。つくっている人、働いている人がいなけりゃ成り立たないのに。
東京酒場漂流記 (ちくま文庫)
フォークシンガーであり俳優であり飲兵衛であるなぎら健壱さんの
居酒屋エッセイ集。
なぎら氏の思い出の居酒屋とご自身の体験談や思い出などをつづっ
た本で、居酒屋のガイトブックというより飲み屋での雑談をそのま
ま本にしてしまったという感じ。
このなぎらワールドを心地よいと思うか思わないかは人それぞれ。
そもそも酔っ払いの主義主張ほどあてにならないものはないんです
から…。そんな感じでゆるーく読める本です。
酒にまじわれば (文春文庫)
お酒にまつわる2〜5ページくらいの短いエッセイが詰まっています。
お酒の席ってみんな酔っ払っちゃっているせいか、信じられないような出来事に遭遇することも多いけど、
なぎら健壱くらいの酒飲みのプロになるとそんなエピソードのすごさもハンパじゃない。
思わず吹き出すようなエピソードもあり。「人っていいなぁ」とホロリと来るようなものもあり。
物事をよく観察している人だから、面白いものを見つけるアンテナの感度がいい。
だからこの本は面白い!!!
きっとお酒やおつまみの味だけじゃなくて、
店の雰囲気やそこで起こった出来事や会話の内容まですべてを含めて「飲む」ことを楽しんでいる人なんだと思う。
こういう人に愛される酒場こそがほんとうにいいお店と言えるんじゃないでしょうか。
私もこんな粋でかっこいい酒飲みができるようになりたいです。
嗚呼!!花の応援団 ちょんわちょんわDVD-BOX
「映画秘宝」11月号を読んで驚いたのは、湯布院映画祭にぶらりと現れた曽根中生監督が、実はこの20年間消息不明で一説では自殺説もあった事を知った事だ。
そう言えば、もう長い間その監督作が御無沙汰であったなと思いながらも、映画の世界からリタイヤした後、ヒラメの養殖やヤクザまがりの稼業の周辺にいたと言うのが破天荒で、さすがは、若き頃、曽根義忠として若松孝二や鈴木清順に師事していた曽根監督らしいと思えた。
「嗚呼!!花の応援団」が公開されたのは76年。原作は、当時から「週刊漫画アクション」誌上にて絶大なる人気を誇っていたどおくまんプロによるハチャメチャ・ギャグ漫画として有名であった。
日活は御存知の通り、ロマンポルノ路線に大きく舵を取っており、通常は成人向け映画2本立てプログラム・ピクチャーとして、18歳以下は入場出来ず、当時地方の純な高校生だった者としては、さすがに日活の封切り館に入るのは“敷居”が高かったが、夏のお盆興行で、一般映画扱い(だったと思う)で恐る恐る初めての入場、映画館内は10代も含め若者層で盛況で、何か、不思議な気分になったものだ。
映画自身は連載中の劇画ほどのアナーキーで破壊的なナンセンス度には劣るものの、大学応援団のいかにもと思える強力な縦割り社会、軍隊もどきの上下関係ある階級制をデフォルメさせたバカバカしさの中に哀感とペーソスをも持ち込む一方で、恋愛や友情については、意外にも純情で熱さすら感じさせるエンタメ痛快作となっていた。
映画の大ヒットで、その後、第2、3作が公開されたが、それが30年余りの歳月を経て、今回DVD−BOX化される事になったのは、何か感慨深いなぁ(笑)。
しかも、サブタイトルが“ちょんわちょうわDVD−BOX”ってベタ過ぎるし、ネットならともかくショップの店頭で口頭で予約をするとしたらかなり恥ずかしいけど、今シリーズのテイストに妙に合致していて、好きだなぁ(笑)。
そう言えば、今作の製作時、主役を始めとして主要キャストに実際の学生応援団員たちを入れようと広く公募したのも今となっては懐かしい。
結果、国士舘、拓大、近大、日大らその道の“一流大学”らの如何にもと思える猛者たちが選ばれているので、迫力も十分だった。
「ちょんわちょんわ」は、主役の青田赤道の決め台詞であったが、他にも流行語になった言葉は多い中、個人的に、今も忘れられないのは、第2作にて登場する薬痴寺先輩による後輩たちをいびり虐め倒す際に発せられる「役者やのぉ〜」。
演じたなぎらけんいちの名演と共に、DVD化を機に再聴できるのが楽しみだ。
第1作は、その年のキネマ旬報ベスト10にもしっかり選出されている痛快作だからね、良識派の映画ファンにもお薦めしておきたい(笑)。