ぞんびだいすき
初見は『MOTHER』風なグラフィックとファミコンライクなBGMに懐かしさを覚えます。
非常に『狙っている感』が感じられ、往年のゲーマーならニヤリとさせられるでしょう。
ゲームは一見、良くあるRTS(リアルタイムストラテジー)に育成アドベンチャーの要素を足した感じです、
個人的にRTSの部分はGBA初期に任天堂から発売された佳作『ナポレオン』を思わせる感じがします。
ただ、ゲームバランスは『ナポレオン』の様に洗練されてはおらず、非常に大味で割と適当な誘導でもゾンビ達がなんとかしてくれます、しかしこれは決してマイナス要素ではなく、この大味で簡単に見えるゲームバランスが後に絶妙な味わいを放ってくれるのです。
例えば、ボスキャラなどに限っては、攻撃のモーションを盗んでゾンビ部隊を『攻撃→撤収』と切り替え、相手の隙を付く作業が必要となります、これはGCの傑作『ピクミン』を連想しました。
ゲームが単調にならない要因にパパラッチの存在もあり、彼らに見つかると撮影が始まり、撮影開始1分経過で特殊部隊のSWATを要請されてしまいます、SWATは2分後にヘリで到着しゾンビ狩りにやって来てしまいますので始めの撮影中1分の内にパパラッチを倒すか、SWAT到着までの3分の内にクエストを終えるかを状況によって判断し、ゾンビに指令を出します。実際のクエスト所要時間は長くて5分〜10分が平均ですので、これは微妙な駆け引きになります。
さらに体力の回復やスペシャルスキルの利用などを覚え始めると、大味な部分と、計算されたゲームバランスとが見事に融合し、非常に至福のゲーム体験を体感できます。
主人公のゾンビは初期は20匹(人?)のメンバーがいるのですが、彼らを牧場でどう育成するかも大きな駆け引きです。
この育成の舞台である『牧場』でゾンビ達を強化するのですが、彼らはクエストで持ち帰ったアイテムを食べて強くなります、メインクエストがクリア出来そうも無いときはサブクエストをこなしてゾンビを強化します、メインクエストとは違いサブクエストは(ランダムですが)何度でも同じクエストを受けられますので、地道にゾンビを強化してゆくのも楽しみの一つです。
さらにこの育成モードでは手持ちのゾンビそれぞれのプロフィールなども閲覧出来るのですが、こういった余計なところにまで拘っているのも本作の魅力の一つです。個人的にはこのプロフィール画面でゾンビの名前が編集できるのですが、これを家族や友達の名前にするだけでかなり笑えました。
操作系統は基本は十字キーとタッチペンですが、タッチ操作のみでも可能な配慮がされているのにも好感が持てます。様々なプレイスタイルを考慮する辺りが丁寧に作られた結果だと思われます。
総じて本作は、実は非常に高度なバランス調整と遊び心の元に作られた職人技的傑作と思います。
難易度はかなり易しめで、ライトユーザーでも安心して遊べるとっつきやすさがあると思います、ただコアゲーマーやガチガチのシミュレーション好きには簡単過ぎるかもしれません。一応メインクリア後に死んだゾンビが生き返らないモードは登場しますが、いつものチュンソフトなら超難度のマップが開放される等のサービスがあるかと期待していた部分はありました。
しかし実は牧場シーンでゾンビたちの動く姿をボーッと眺めていても結構面白いのです、最終的には60名を超えるゾンビが牧場を埋め尽くすのですが、彼ら一人ひとりが好き勝手に動くのでちょこちょこタッチペンで触ると意外と癒され見ていて飽きません。そんな環境ソフトっぽい一面もあり、これは予想外の楽しさでした。個人的には難易度の件は牧場のおかげでプラスマイナス0です。
本編クリア後には今迄のクエストをやり込めるモードも現れ、チマチマと長く楽しめそうな作りです、ミニゲームには知る人ぞ知るチュンソフトの傑作『ネットサル』を思わせる『デットサル』も収録されています。
クリアを急ぐゲームというより、息抜きに10分だけ1クエストやろうかな?と言った軽いノリが好きな方ならきっとはまれるでしょう。
とっても不思議な感覚のゲームですが、いつまでも手元に置いて遊びたくなるような、ゲームを好きな人ほど本作の魅力に引き込まれるような、そんな作品です。