天切り松 闇がたり [DVD]
素晴しい原作に2011年の今では集められない豪華キャスティング。
その二つを揃えてもTVドラマの限界だったのか、
残念ながら原作の世界観を伝えるのは相当ハードルが高いことを改めて痛感した。
悪くはないんだけれど、この小説4巻が凄すぎる。
オリヲン座からの招待状 [DVD]
映画館が閉鎖されるときの切ない気持ちが漂ってきました。原田芳雄さんがラストシーンで観客に向かってこんなことを語ります。「オリヲン座を閉めることになって、映画人の端くれとしてすまない気持ちで一杯です」映画という文化は、単にフイルムに映像を写したものを観るというだけではなく、映画館という舞台装置を必要とするのかもしれません。映画館が閉鎖されてゆくことは、映画に携わる人にとっては何より辛いことなのかも知れません。日本映画への讃歌ともいえる物語に仕上がっていると思います。ニュー・シネマ・パラダイスというイタリア映画がありましたが、それを彷彿させてくれました。映画への感謝の気持ちをこめて見させていただきました。宇崎竜堂さん、宮沢りえさん、加瀬亮さん。樋口可南子さん、原田芳雄さん、全員の出演者の方々が本当に素晴らしいです。映画人が映画への愛をこめて作った映画なのだと思いました。浅田次郎さんも映画がとてもお好きだとか。原作のファンタジックな雰囲気を大事にして、映画らしい脚色が加えられています。
ま、いっか。 (集英社文庫)
浅田氏のエッセイ集はどれも非常に面白い。小説もいいがエッセイもかなりいい作家である。
自身の苦労話やその時勢に即した話がとても面白く描かれているため、いつも一気に読んでしまう。
本書は「男の本音」や「ふるさとと旅」、「ことばについて」など各ジャンル毎に章纏めされているがどの章も全く期待を外すことはない。また、面白いだけでなく、相応に教養も身に付くような気がする。
軽い話が多いのでリラックスしたい時にお薦め。
壬生義士伝 4本セット [VHS]
映画版もありますが、こちらをお勧めします。
10時間あっての内容、これでも幕末の情勢を描こうとしたら全く足りないでしょう。
今回は実在した隊士に脚色を踏まえての作品ですが、素直に感動します。
脚色がどれほどなのかを議論もされていますが、実際に幕末の一コマとして、こういう状況だったと考えながら見て良いのではないかと思います。
金銭難、脱藩とはどれほどの事なのか、戦に負けた後どうなってしまうのか、その時人はどうあるのか・・・など考えさせられる所はたくさんあります。
映画の内容として、さすが渡辺謙さんという主役、内藤さんの演技は言うに及ばず、今では有名な高杉さんもよく演技なさっています。
長時間モノは一歩間違うとダラダラしただけのものになってしまいますが、非の打ち所が殆どない(私の中では一切ない)作品です。
年末などゆっくり見られる時に通しでご覧になる事をお勧めします。
アイム・ファイン! (小学館文庫)
「近ごろ鏡を見るたび、ハゲがさまになってきたな、と思う…(中略)…主体がハゲ。パーソナリティがハゲ。アイデンティティーのありかがハゲ。浅田ハゲ次郎…(中略)…感無量である。ハゲみにもなる」。
直木賞作家で、現代日本文学界をリードし続けているうちの一人、浅田次郎のエッセイ集。しかし、本書を読む限り、まったく、しょうがないオヤジですね、このちょっとお茶目な文豪は(笑)。体重増加を嘆きながら2袋目のポップコーンに手を伸ばす。自衛隊元歩兵を豪語しながら、仕事をしている日は1日に380歩しか歩かない。ラスベガスでVIP扱いになるくらい博打が好き。自分の馬を所有するほど競馬にも入れ上げる。取材を兼ねてあちこち旅行を重ね、北京ダックが大好物で、特別注文のスペシャルジャガーを乗り回す。ちょっと新規の出版数が減ると、過去の所得に対する税金の支払いがあやしくなる。。。まあ、他にもいろいろあるプライベートな逸話は本書を読んでいただくにしても、ユーモアと読者へのサービス精神が満載。しかも、ところどころ教養を感じさせる説明や含蓄のある指摘もさりげなく含んでいる。
数多くの締め切りに追われながら作品はいまだに原稿用紙に直接手書きしているのだという。それにしても、文章の滑らかさと、展開のうまさはさすがである。そして、読みはじめたら最後、読者を虜にしてしまう。ちょっと古い世代の感覚かなというのは多少あるにせよ、気軽に楽しく読める見事なエッセイ集である。