夜になるまえに [DVD]
日本での報道と異なり、カストロ革命後のキューバの
闇は底なしだった、その沼の中で文学と同性愛に身を焦がし続け
いわば殉教していった作家の青春、
苦労に苦労を重ねて亡命したアメリカへの幻滅、
というアルナスの自伝の映画化。
映画では、幼児期に彼が過ごした原生林の草いきれや、小鳥のさえずり、
川のほとばしる飛沫から、
青年となり永遠に連なる水平線と太陽を背に、
来る日も来る日もタイプを打ち続けるアルナスの真摯な姿、
そして、飽和することの無い同性愛に放埓に溺れ、飲み込まれていく姿、
ナイトクラブ、海岸での男同士の誘いから、
カストロ、それの取り巻きを象徴する地獄のような監獄、
これらが煌びやかで切なく炸裂する花火の如くに 描かれています。
一つ一つの画面が、吟味に吟味を重ねた上等なラム酒の如く豊穣な味わいを含んでいます。
主役の名優バルデムが、実際の作者の風貌にそっくりなのには驚かされました。
まさに傑作の名に値する数少ない映画作品です。
夜明け前のセレスティーノ (文学の冒険シリーズ)
初めてアレナスに出会ったのがこの本でした。本当にすごい「体験」で、読み終わってからも「すごいものを見てしまった!」と興奮状態でした。全ての言葉が、原始的な生命力に溢れていて、飲み込まれるような迫力です。ファン・アブレウがあとがきで言っている「文学は人を危険にさらすもの」というのは、アレナスの小説を見事に言い表していると思います。
今でもアレナスは、私にとって特別な作家です。ペンタゴニアが全部日本語訳で発売されることを心から願ってます!
夜になるまえに―ある亡命者の回想 (文学の冒険シリーズ)
美しい海、生きている悦びを味わった故郷。しかしカストロの独裁によって祖国に踏みにじられた青春とその才能。
とても辛い人生を書きながら、アレナスの言葉は読む者に弾けるような感動を与えます。キューバという国がアレナスの感性を育て、苦しめた。読む者に自由というものを考えさせる最高の自伝です。この感動は読まないとわからない。アレナスを知ること、とても貴重な体験になるに違いありません。