ホットロード 1 (集英社文庫―コミック版)
どう考えたって紡木たくはコレを描きたかったんだよなぁ、とうなずくことしきりです。
彼女はこれまでにも色々な作品を描いてきて、そのどれもが「思春期の少女のあり方」を示していたんだけども、彼女にとって初めての長編、『ホットロード』は今までのとはレベルが違ってぐぅっと上昇していて、誰にもマネの出来ない素晴らしい世界を展開しているのです!!
今まで言いたかったことを、この作品で濃密に吐露しきってしまったので、これ以後、紡木さんの世界は『瞬きもせず』『小さな祈り』等、いわゆる「不良もの」とは変わって「普通もの」「優等生もの」に変化しました。もちろんそれらも素晴らしい世界です。
・・が、やはり彼女は『ホットロード』がすべてだったのではないでしょうか、『ホットロード』を描く為にこの漫画家は存在したのではないでしょうかっ!!!
こんなに登場人物の傍らにすっと寄り添って彼らの心情を、まるでそれが自分自身のものであるかのように語っていくことのできる、そんな才能に恵まれている漫画家を、私は他に知りません。
読めずに死ねず。あの世まで、持っていきましょう。
マイガーデナー
酒席で、同姓の知人と「ホットロード」「瞬きもせず」について激論した際、本書を薦められ、購入しました。
その知人との会話、また表紙から、大人になった紡木さんの分身のような女性が主人公の物語なのかな、と思っていました。
それが全然違ったので(星4個はそのため)うまくレビューできません。
しかし、こじつけと言われればそれまでですが、この違和感こそ、20数年前、初めて紡木さんの作品群に触れたときの違和感に近いようにも思えます。
そこにいたのは、自分(♂)の視線とは似て非なる、しかし確かなリアリズムに基づいて描かれた、少女や少年たちでした。
この「似て非なる」の感覚、自分の世界と紡木作品の世界との違和感、一方は現実であり、一方は(優れて精緻に描かれた)フィクションであるわけですが、それこそが自分が大事にすべきものなのか‥‥等と考えています。
紺野が都会で堕ちてゆく描写は、少女漫画という枠はもちろん、漫画作品、エンターテインメントという枠に敢えて挑んだ(?)優れた展開だったと思います。
作品としてのまとまりを考えるならば、いくら人気作品でも、もっときれいに終わらせることができたはずですから(ここらへんが知人との激論の中身です)。
あれは時代の要請だったのか(決してアーティストぶらない)アーティスト=表現者としての紡木さんの闘いだったのか‥‥。
‥‥この作品のレビューでした(汗)
ええっと、自分は、年齢で言うなら、連載当時の紺野やかよちゃんと同期に当たります。
そんないい歳こいた(汚れきった)中年の自分の中にさえ、「発作」のようなもの‥‥それは(自分でも書いていて恥ずかしいのですが)「純情」という名で呼ぶべきものなのか(等という思索)‥‥を起こしてくれた(あの「紡木たく」の筆による)繊細な物語でした。