神様のカルテ スペシャル・エディション【Blu-ray】
原作では、 漱石オタクの内科医イチと、その妻でプロカメラマンのハル、そして御嶽荘の奇妙な面々とのやりとり、
地域医療、週末医療の在り方等が、丁寧に描かれていたが、
映画では、他の方が言われるように、かなりの駆け足で、原作をなぞっていくため、
既読者でも脳内補完しないとキビシイ状態。
そして、 原作では、古めかしい言葉遣いで、テンポの良い皮肉や受け答えをするイチが、 映画では、ただの丁寧語をボソボソ喋るキャラだったのにはガッカリ。
これは、櫻井翔の演技云々より脚本の問題か?
宮崎あおいの演技は、さすがだが使用しているカメラがオリンパスだったのでキャスティングに大人の事情を感じてしまう。 因みに原作で愛機はライカ。
まぁでも、単純にエンターテイメントとして観るなら、それなりに楽しめます。
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
筆力は素晴らしいと思います。多少、無理な設定はありましたが、それでも、全体的な構成力、緻密な文章力、心理描写……いずれも見事です。ということで、とりあえず、三点★です。ただ、この作品が「本屋大賞」を受賞したことは、残念でなりません。
「本が売れないといわれる時代、売り場からベストセラーを作る」……これが本屋大賞の第一コンセプトだった思います。また、「書店員自身が自分で読んで『面白かった』『お客様にも薦めたい』『自分の店で売りたい』と思った本」ということも大きなコンセプトですよね。
この『告白』は、本屋大賞以前に、十分売れていました。ほっとおいても、読者の興味は十分そそる本ですよね。でも、書店員さんというプロは、もっと違った目で本を選んでほしいと思うのです。それが「売り場からベストセラーを作る」という気概のように思います。そして、この本が「全国の書店員さんが、今年一番、読者に届けたかった本」であるということに、本当に残念な思いでいっぱいになってしまうのです。
私は「書店員さんが、ぜひ届けたいと思ったベスト1」と思って、「本屋大賞」を信じてこの本を買いました。この作品が、「江戸川乱歩賞」「山本周五郎賞」さらには、たとえ「直木賞」を取ったとしても、私は「まあ、それもありかな」と感じると思います。「その年、一番のベストセラー」だとしても、もちろん、なんの違和感もありません。
しかし、「書店員さんが読者に届けたい」という「本屋大賞」だけは、どうしても違和感があります。
残念ですね。「本屋大賞」に参加している書店員さんは、この本を多くの読者のもとに届けたいと思ったのですね……。
黄金を抱いて翔べ (新潮文庫)
高村薫のデビュー作にして、日本推理サスペンス大賞受賞作である。
著者の出身地である大阪を舞台に、緻密なディテールと多くの伏線を配した構成に魅了される。
登場人物の背負う暗い過去や護るべきものの違いなど、きれいに色分けされたキャラクターも魅力的だ。
ただ、そのディテールの細かさやアンダーグラウンドな世界観が仇となって、作品が読者を選んでしまうかもしれない。
文章でなかなか表現しにくい、時間の流れの緩急も巧みに利用し物語を最後まで失速させることなく描ききっている。
折々に差し込まれる、主人公「幸田」の過去によって、個人の存在を成立させるだけでなく、見事安息の地へ導いている。
読んで損をしない一冊なので、お勧めしたい。
ふがいない僕は空を見た
久々におもしろい新書に出会った。読み始めは、電車の中で読んでいたら痴漢にあうんじゃないかとひやひやしたが、進むうちにこれがただの淫猥な私小説でないことを確信する。登場人物それぞれの視点、というより世界からなる各章は、あるひとつの地域のひとつの町の一角、それも同級生からなる数人の関係者だけの物語とはとうてい思えない広がりをみせている。現代の縮図であり、日本の縮図であり、人間の縮図がここにある。
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
1,2章を読んでいる間は、「ユニークだな」「漫画みたいで読み易い」と思っていました。
しかし、3,4章では、「学芸会みたいでレベルが低い」と思ってしまいました。
理由は分かりません。
内容的に、1,2章が”不思議な世界”なのに対して、3,4章が”想像可能な学生の世界”に見えたからかもしれません。または、”不思議な文体に慣れて、新鮮味を感じなくなった”からかもしれません。
どちらにしても、もう、同種の作品を追加で読みたいとは思えません。