風の歌を聴け [VHS]
何だか80年前後が懐かしく感じられた。真枝寺君江が実に美しい。小林薫、室井磁などの若い頃も観れます。
村上春樹の原作ファンの評判は非常に悪いが、新しいところがないにせよ、ATGだけあってか結構楽しんで観れた。小説とはぜんぜんちがうものだけど、少なくとも自分は、観た後に何かが心に感傷を残した。大森一樹作品の中では観る価値があると思う。
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
村上作品の中で一番しっくり来たのがこれだなあ。それまでの作品では、クラシックから60年代の洋楽まで、ただその名前を挙げるだけだったり、「カラマーゾフの兄弟」の兄弟の名前を言って「今の日本にどれかけ言える人がいるだろうか」などとうそぶいたり、要するに知識をひけらかすところが鼻についてしょうがなかった。この「海辺のカフカ」でようやく、ホシノさんがベートーベンの「大公トリオ」に感動する心を通じて、作家の音楽論というか、批評眼を目にした気がした。ベルグソンの古典的名著「物質と記憶」を、さくらがカフカ君のイチモツをくわえながら「ふっひふほひほふ」という場面は大爆笑した。ベルグソンも形なしだ。
途中で大島さんがカフカ君を高知の別荘みたいなところに連れて行く場面。大島さんの「自然というのはある意味では不自然なものだ。安らぎというのは、ある意味では威嚇的なものだ。その背反性を上手に受け入れるにはそれなりの準備と経験が必要なんだ。だから僕らはとりあえず街にもどる。社会と人々の営みの中に戻っていく」(p324)というセリフはずっとぼんやりと感じていたことをずばり言われた気がした。
それからナカタさんは村上春樹の小説の中でも、ずば抜けてすばらしい人物だと思った。村上氏が理想とする「カラマーゾフ」のアリョーシャを描くことに成功していると思った。
ショート・カッツ [VHS]
LA郊外の街自体を一つの生命体のように描いている。
前からあったのか、これの影響なのか、これ以降この手の映画が増えてきてますが(例、マグノリア)、ここまでうまくいったものはない。
DVD化、希望。
1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)
6巻まで1週間かけて読破しました。最初は訳が分かりませんでしたが、だんだん独自のワンダーランドが見えてくるのが3巻目の終わり頃です。リーダーとの会話で「1Q84」という世界がおぼろげながら分かり、それが「猫の町」の物語で補強されいきます。
最後は意外性の少ない結末でしたし、これまでの著者の本とは異なり、1Q84という世界が現実的で存在理由が見えません。何を言いたかったのかがイマイチ判然としません。こんなに長い小説にする必然性も感じられませんでした。
ということで期待感が大きかっただけに、何にも解決しないまま、今のは夢でしたというような、ちょっと拍子抜けしたというのが読後の印象です。
Norwegian Wood (Vintage International Original)
はじめて村上春樹に出会った日の感動を思い出します。リアリティから
微妙に位相のずれた次元を浮揚するあの感動。
夢の中で夢を見るような、人生で一回だけの100%の午睡みたいな。
多分この一冊で10万語程度はあるでしょう。
それを一気に読ませる卓抜な構成を、異言語で味わうって、
むちゃくちゃ新鮮ですね。
語彙的にはヘッドワード3000〜3800程度のgraded readerとほぼ同じでしょう。
使用頻度の少ない単語を読み飛ばしても、ストーリーはやっぱりHARUKIです。
英語学習者のめざす最初の高峰として是非お勧めします。