クリスタル・ヴィジョンズ~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・スティーヴィー・ニックス
S.ニックスの作品としては2001年以来の本作は、珍しいヴァージョンや未発表音源を含んだベスト盤。タイトルはもちろん名曲ドリームスの歌詞中の語句。このザ・ヴェリー・ベスト・シリーズは本作も期待を裏切らない。F.マック時代から81年以降06年までのソロ活動の軌跡を、レーベルを越えて辿る。バッキンガム・ニックス時代の曲もあればと思うが、無理なのだろうか。それはともかく、70年代F.マック以降の彼女から遠ざかった人には、彼女の尽きない魅力・変らぬ個性を知るよい契機になるだろう。80年代のヒット曲に聞き覚えのある人も多いのでは。彼女の全キャリアを通じて偏りのない選曲だが、聴きなれたものとは違うヴァージョンがあるのが本作の特徴。リアノンは05年のライヴでザ・ダンス収録版に似たアレンジ。ドリームスは05年のディープ・ディッシュ・クラブ・ミックス。ランド・スライドはM16とともに06年のメルボルン交響楽団との共演。このランド・スライドは必聴だ。シルヴァー・スプリングスは日本語資料ではザ・ダンス収録の演奏のように読めるが、明らかにLP噂製作時のもの。当時シングルB面で発表され、噂エクスパンデット・エディションにも収録されている。M14はL.ツェッペリンの原曲に忠実な05年ライヴ。大歌手が自分の好きな曲にチェレンジするその意気やよしと評価したい(ギターはW.ワクテルか?)そのツェッペリンへの思いや、ステージ袖にロバート・プラントがいたこと等、彼女自身が各曲の背景・エピソードを解説しており、興味深い内容である。私は彼女の独特の詞の世界とこの解説をじっくり楽しみたかったので日本盤を求めたが、輸入盤はDVD付きである。私はそのDVDに関心がなかったが、彼女の映像も入手したい人は輸入盤の頁もチェックするとよいでしょう。
Bella Donna
その可憐な容姿と少々ドスの利いた独特のハスキーな歌声(これが何とも魅力的。ロックっぽさと女性らしい繊細な情感、時に意地らしさといった要素が絶妙に同居する貴重な声質は唯一無比)、F. W. Macの看板として大活躍した彼女が'81年にSoloリリースしたのが本作です。
ここで特筆すべきは、個々の曲の良さはもちろん、ほぼ全曲にクレジットされているWaddy Wachtelの見事なバックアップでしょう。自在に変化する彼のギターが曲調によって、時にドライブし、時に繊細に歌いながらStevie魅力を一層鮮烈なものにしています。Waddy自身、一時期Stonesへの参加も噂された達人ですが、本作でもカッティングのセンス、トーンの引き方に抜群の冴えをみせてくれます(Stevieとのコンビネーションは他のソロ作でも多く聞けます)。
シングルヒットも多く含まれ、彼女の指南役Tom PettyやDon Henryとのデュエット("Stop dragging my..."および"Leather and Lace")がよく知られていますが、個人的にはドラマチックな"Belladonna"、ワイルドなドライブ感がカッコいい"Edge of seventeen"、繊細な情感が魅力的な"How still my love"が特にお気に入りです(ジャケットも大好きです)。
コンスタントに魅力的なsolo作をリリースしているStevieですが、曲、ヴォーカルとも彼女の魅力が凝縮されたこの"Belladonna"が最高傑作であろうことは、多くのファンの一致するところでしょう。
Live in Chicago [DVD] [Import]
ソロとしてのオフシャル映像は、最初のソロ・ツアーの模様をおさめたイン・コンサート(時間は60分であるが名作である)、その後のレッド・ロックスに次いで、わずか3作目である。前2作が80年代であるので、20年以上の時を経てのリリースである。
しかし、バック・メンバー、曲のセットリストを含め、あまり時代の隔たりを感じさせない。確かにイン・コンサートに比べれば体系も少し丸めであるが、とても60歳前とは思えないところは“魔女”と呼ばれる所以かもしれない。
1時間50分にわたる本作品は実に見ごたえがある。小さめの会場でのバックスクリーンを含んだステージ作り、照明、カメラワーク、音といずれも現代の作品という感じであり、往年のストレートなロック・ステージとは赴きを異にするが、動く元気なスティービーがまとまって、きれいな映像で見れるのは、うれしい限りである。最後のエッジ・オブ・セブンティーンもオーケストラがバックに入り、スリリングな展開となっている。ボーナス・トラックはオーケストラをバックにしたランドスライド(観客なし)である。本編とは違って、なかなか味わい深く仕上がっている。
なお、リージョンコードはオールであろう。日本のプレーヤーで問題なく再生できた。元気なうちに是非、日本に来て欲しい。
麗しのベラ・ドンナ
フリートウッド・マックの女性ヴォーカリスト、麗しきスティーヴィー・ニックス1981年にリリースした初のソロ・アルバムで全米NO.1に輝いた。
トム・ペティとドン・ヘンリーという大物ミュージシャンが参加している。トム・ペティは3「嘆きの天使」のヴォーカルとギター9「雨に濡れて」のギターで参加。ドン・ヘンリーは8「レザー・アンド・レース」のヴォーカル10「ザ・ハイウエイマン」のドラムとバッキング・ヴォーカルで参加。このアルバムからは3865の4曲のヒットが生まれた。フリートウッド・マックでの彼女の独特の歌声が、ここではフィーチュア(ソロだから当たり前だけど)され、存分に味わえる。シンガー、スティーヴィー・ニックスを味わうのはお薦めの一枚。