しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)
とある本にて
綾辻行人さんが
見つけたらとりあえず買ってしまいましょう
とまで書いてたを見て読んでみました。
200ページちょいの短めの作品なんで
サクッと読んでしまったんですけど
なるほど。
すごい本でした。
推理小説家でありながら
手品師としても活躍してる作者ならではの
とんでもトリックです。
ミステリ好きならもちろん
普段ミステリ読まない人でも
一見の価値は十全にあると思います。
すばらしい一冊です。
なにげに
ガンジーをはじめとする登場人物も
ユニークで惹かれるものがありました。
シリーズでけっこう出てるようなんで
見つけたらまた買ってきてみようかな
と思ったりもしてます。
亜愛一郎の転倒 (創元推理文庫)
名探偵名鑑が編まれた時に(五十音順で)最初に
くるようにと命名された本作の探偵役・亜愛一郎。
雲や虫、化石などを専門に撮影するカメラマンである亜愛一郎は、その眉目秀麗な
外見にそぐわないドジな振舞いを連発するとぼけた人物として造形されていますが、
誰よりも早く事件の存在に気づき、真相を見抜く観察力と推理力も備えた好漢です。
ミステリとしては、奇妙な謎や風変わりな状況が示された後、それについて天啓が
閃いた――「白目をむく」というアクションをする――亜が、謎解きを披露する ――
というのが基本パターンで、まず意外な真相が明かされてから、亜がそこに到るまで
の思考のプロセスが開示されるといった構成が採られています。
その際に展開される読者の意表を突くチェスタトンばりの逆説的ロジックは、
ときに非現実的なものになる恐れもありますが、それに説得力を付与すべく、
全編に亘ってさりげなく数多くの伏線が張り巡らされています。
読者は、亜の謎解きによって、あれもこれも伏線だった
のかと気づかされ、必ずや驚嘆させられることでしょう。
※収録された短編の内容については「コメント」をご参照ください。
亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)
著者が「幻影城」誌上で新人として「DL2号機事件」でデビューしたとき、そのつかみどころのない作風に唖然としたことを、昨日のことのように覚えている。
私は当時、大学生だったが、まだミステリのマニアとしてはその玄関に立った程度のものだった。
しかし、それでも、著者の作品のミステリ度の高さ、論理の飛躍、そしてなにより徹底的なロジックの展開にしびれたものだった。
その第一回新人賞の、入賞と佳作の受賞者の中では、やはりピカ一の存在だった。
入賞者の村岡某の作品なんて、まったく眼じゃなかった。
だから、著者がすぐに亜シリーズの短編作品を同誌上に掲載し、さらには「11枚のとらんぷ」なる長編作品を刊行したことに喜んだものだった。
その後の著者の活躍は、周知のことである。
その著者の、「幻影城」に掲載された亜シリーズの初期の作品が、本書に収載されている。
本シリーズも後半になると、掲載誌が「野性時代」になったり、著者の創作志向が「湖底のまつり」以降、かなり文学的になったせいもあって、かなりゆるいものになる。
しかし、初期の作品では、もちろんそんなことはない。
ユーモアの皮を被ってはいるが、ガチガチの本格ミステリである。
バラエティに富んだ作品群なので、ひとそれぞれに期すな作品があるだろう。
私は、非常にヴィジュアルな「掌上の黄金仮面」が一押しだ。
不可能興味満点な「右腕山上空」もいい。
とにかくこの一冊、読んで損はない。
短編のガチミステリのお手本としても、十分なものである。
あなたが名探偵 (創元推理文庫)
本格ミステリは全てすべからく犯人当てミステリではないが、逆は真なり――と、本格の中にはアリバイ崩しや倒叙ものもあるんだから当然でしょ、というなかれ、犯人当てというか「読者への挑戦」付きミステリにはその枠組みの中で洗練されたアノ手コノ手のワザがあり、何なら鮎川哲也の創元推理文庫から出ている短編集を読んでくださいませ、いやーホントにン十年も前にこんなことを考えたひとがいるなんて、ちょっとした感動を覚えますですよ。近年、この種の感動を覚えたのは愛川晶『カレーライスは知っていた』(光文社文庫)。文句ナシの怪作集。
さて本書はこれらとくらべると、まーずいぶんスマートな出来(笑)。解答を公募したのだから仕方ないといえばそうなんですが。でも「カレー――」も懸賞小説だったんだけれど(しかも賞品自腹)。スマートなまま綺麗に解答編を纏めた法月綸太郎のが私のベスト。この「ゼウスの息子たち」は正解率50%を狙った上で、物語を仕立てたと思う。
伊坂幸太郎選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎005 (講談社文庫)
「謎」シリーズの第5弾だが、これまで謎解きミステリらしいアンソロジーと感じた事はなく、期待外れの物が続いていた。今回のブレンダーの伊坂氏に期待したが...。
陳舜臣氏「長い話」は、単にあるエピソードを綴っただけでミステリとは思えない。今邑彩氏「盗まれて」も底が浅過ぎて、謎の気配が感じられない。泡坂妻夫氏「飯鉢山山腹」は亜愛一郎もの。ユーモアたっぷりの記述とトリックの組み合わせの妙が光る。大トリックではないのに読者を煙に巻く手腕は流石と言える。夏樹静子氏「パスポートの秘密」は平凡な構想で、話の発端から結末まで偶然とヒロインの想像だけで成り立っている心許ない作品。真保裕一氏「私に向かない職業」は、題名もパロディ、内容もハードボイルドのパロディだが、トボケタ味で中々読ませる。鈴木輝一郎氏「めんどうみてあげるね」は、良くあるテーマとも言えるが、語り口の上手さで無難な出来か。連城三紀彦氏「夜の二乗」は既読だったが改めて感心した。男女の心理の翳の描写、着想外のトリック、巧妙なプロットの三拍子揃った秀作。本作レベルの短編を揃えて貰えれば購入した甲斐があると言うものだが...。小松左京氏「長い部屋」は、専門のSF的手法をユーモア・ハードボイルドと融合させたものだが、脱力感しか覚えさせない内容。
「夜の二乗」を除くと、読み応えのあるミステリ・アンソロジーとは到底思えなかった。この辺で企画を見直しても良い時期なのではないか。