小林一三は、一般に阪急電鉄の「創業者」「オーナー」と思われているが、実は創業者ではなく、創業期の経営幹部であった一方、
宝塚歌劇団や阪急デパート、東宝、阪急ブレーブス等を創り出したアイデア溢れる経営者としてよく知られている。本書は明治から昭和に掛けて実業の世界で後世に名を遺した小林一三の人生を分かり易く解説している。
本書で鮮明に描かれているのは、明治時代の慶應義塾や三井グループ、更には関西経済界等の人と人のつながりであり、それらを糧に先を読む力を養い、やがて周囲を驚かせるような新事業の目利きとなって行った様子である。
特に、鉄道会社と街づくりというビジネスモデルは阪急に始まり、東急や西武など首都圏にも移転されて行った歴史も興味深い。
小林一三は、「世の中に対して貸勘定をつくる」という言い方をしており、「大衆に楽しさ、便利さの貸勘定を残した」とも評されますが、今で言えば世の中の為になる仕事、CSRに通じる考え方とも取れます。