…この作品を一言で語るなら、正にこの言葉がピッタリでしょう。
愛する村尾の前では女の面を見せながら、彼女にはもう一つの母親と娘の面があって
そのせめぎ合いの中で死を選んだ。
村尾は冬香との痴情を誘ったのだが、交際の最後には
―視聴者から見れば気がつく範囲で―どこか醒めた部分があって
そして冬香の感情もどこまで続くのかわからない。
夢はいつか終わる。
終われば平穏な、死んだも同然な生活が待っている。
結婚前から、愛していた、初恋の作家に出会った、本当の愛を知った。
時間をとどめるなら死ぬしかない。
相手をぶっ壊してでも。
この私の感想も冬香の一面しか他ならないだろう。
冬香の気持ちはよくわかる。
自分も同じような、手に届かない人が好きで―いっしょにゆりかもめに乗ったのだけど
言い出せなかったのだ。
言ってしまえば、全部壊してしまう、相手も。
飛び越えて、夢を叶えた後は現実が待っている。
愛がおだやかな愛になるのは幸運で、壊れたり潰れたりするのが当たり前だろうから。
村尾も本当の冬香を知らない。
裁判の最後に語ったことも、そして最後の台詞の中にも、真実はここにはないと思った。
でも冬香に一生取り込まれる。
この愛の関係の結末はとても美しいし、当事者は幸せだったのだなあと思いました。
もう人間関係のあやふやと妖しさと哀しさが叙情的に滲む様な映画。
難を言えば他のレビュアーの方も書かれている
長谷川京子さんの検事さんですか、
鼻でくくったような他人を馬鹿にしたような演技が終始気になってしまった。
検事調書を読み上げる時は笑い声だしw
映像の流れをぶった切りにして、興をそいでしまう。
思わず液晶画面を殴りつけたくなりました(おいおい)。
内蔵助さんのキャラもこの作品に出す必然性がないなあ・・・。
その他の役者さんは名演なんだけどね・・・。
この事件を追うのはむしろ嫁さんに逃げられた検事さんの方が良かったかもしれない。
この件も物語の全体的なバランスを崩すことはなく、
結末まで世間から背を向ける村尾と冬香の愛の物語が語られる。
背徳だろうが刹那的だろうがかまわない。
むしろ世間の卑俗さと比べると高尚ささえ感じる。
それは冬香の愛が初恋だったのだからだろうか?