月刊誌『太陽』に連載されていた。単行本なったことを長い間、知らずにいた。読んだのは高校受験を控えた1974年春。密かに読んでいた(笑)
高山病で身体がおかしくなって、気象観測を続けることがむりなのに頑として下山しなかった野中到の姿に、あらためて明治の人の意志の強さを感じた。
若い時は到の功績を褒めたい気持ちであったが、今は子供たちを残して山頂に向った千代子の心境が少しわかる。
気象庁に勤務されていた新田氏ならではの記録体の文学。
近くの本屋には新田次郎の本がなく探していました大いに助かりました。
山岳小説というのはどうやら狭いジャンルのようで、ちゃんとした作品を数多く世に出している日本の作家ということになると、10人どころか5人いるかどうかも怪しいです・・・。
逆に言うとそれだけ新田次郎が有名であるとも言えるのですが、短編長編あわせた様々な作品の中でこの『孤高の人』が最も面白いです。主人公は昭和初期に日本アルプスをたった一人で、しかも超人的なスピードで征服しまくった実在の人物である加藤文太郎です。非常に口下手で人との関わりが下手な人物なのですが、作者の巧みな筆運びによって、読み手は知らず知らずのうちに文太郎を応援してしまいます。
特に冬山での単独行はちょっとしたミスが命取りになる過酷な作業のはずなのですが、驚異的な体力と周到な準備を怠らない文太郎を見ていると、なんだか簡単そうに見えてしまいます。実際に当時としては相当抜きん出た存在だったのでしょう。
僕は一度もアルプスに行ったことはありませんが、この本を読むことで、自分が槍ヶ岳の山頂に一人で立ち、凍てつくような透明で鮮烈な空気を吸い、深い深い雪を踏みしめて稜線を延々とラッセルして行くような・・・そんな気分を味わうことができます。
今までの人生で5回観ました。映画というのは、その時々の経験で、まったく違った側面が強調されて見える、味わいが変わることがこの映画で実感されました。最初に見たときは、単に雪の中でたくさん人が死ぬ、雪山は怖い(小学生の頃)としか思わなかったのですが、サラリーマンを何年もやってから改めて観ますと、本当に似たような状況に出くわした自分であり周囲が映像の中に重ねあわされて、全く違った感想を持ちました。 組織の圧力の中で如何に上長を説得し、それでも止まない上長の横槍の中、自分の考えをどうやって通して、望ましい結果を導き出していくか、また軍隊というそもそも人間性が疎外される中で、自らの生き様であり、部下に対する人間的な思いやりを、軍隊としての枠組みを離れずに表現出きるか、高倉健と北大路欣也が演ずるタイプの全く異なるリーダー像を通じて感じ入った次第です。 しかし、最高の結果を出したグループが何年後かには203高地で全員命を散らした一方、リーダーシップ不在で死のふちを彷徨いながらも、足を凍傷で失ったがために、第二次大戦後まで生き残ることが出来た兵士が過去を振り返るシーン....。人生何が勝者で何が敗者か、その基準とは何かまで考えさせられました。 時代考証等は差し置いて、リーダーシップとは何か、組織とは何か、そして日本人が失いつつある矜持とは何かを考えさせられる作品です。本当にお勧めします。
低体温や結核で具合が悪くなっていく役の顔色がどんどん悪くなっていくのですが、最近の映画は病気だろうが凍死だろうが血色がいいまま死んでいくので逆に新鮮です。 それからこの時代でもまだ士族とか身分にこだわりがあるのが興味深い。
|