ワイド
スクリーンの歴史スペクタクル大作映画として有名な、『ベン・ハー』(1959)の原作。映画は戦車レースが一番のクライマックスだが、原作は戦車レースが比較的あっさりと、物語の中盤で終わってしまう。映画ではこのレースで宿敵メッサラが命を落とすのだが、原作ではその後も生き延びて、ベン・ハーに刺客を繰り出したりする執念深さを見せる。また
エジプトの賢者バルタザールの娘イラスという美しい女性が登場して、ベン・ハーを誘惑したりもする。そして各人各様の思惑を折り込みながら、「救世主の出現」というクライマックスに向かって話が突き進んでいくのだ。
主人公ベン・ハーと宿敵メッサラ、そしてイエス・キリストは、全員がほぼ同世代の男性という設定になっている。ユダヤ人の誇りをかけて生きようとするベン・ハーと、
ローマ人としての傲慢さと残酷さを身に着けたメッサラの対比が物語の大部分を占めていて、映画版はこれを膨らませている。だが原作小説ではそれとは別に、ユダヤ人の誇りを取り戻すために軍勢を集めて
ローマに対して立て上がろうとするベン・ハーと、天にある見えない王国についての教えを説くイエス・キリストが対比されていく。逮捕されたイエスに失望した兵たちがベン・ハーに向かって、「あの救世主は偽物です。でもあなた自身が剣を持って立ち上がると言えば、我々はあなたについて行きます」と詰め寄る場面が印象に残る。
人物の対比ということで言えば、奴隷身分でありながらベン・ハーを慕うエステルと、美しさの陰に毒針を隠しているイラスの対比も原作の面白さ。ただしイラスは1925年版の映画にちらりと出てきた程度で、1959年版の映画からは完全に削除されてしまっている。戦車レースからキリスト受難劇までを
コンパクトにまとめるため、ベン・ハーの色恋沙汰は割愛されたのだ。エステルのキャラクターをより豊かなものにするため、ライ病にかかったベン・ハーの母と妹を世話する役を、女奴隷のアムラからエステルに移しているのは1925年版も1959年版も同じ。原作と映画を比較すると、映画の作り手がどんな意図でどんな脚色をしたのかが、いろいろと見えてきて面白い。
アカデミー賞11部門獲得作品…というと最近ではタイタニックなどもあるじゃないか?などと思われがちですが、当時は特撮などへの賞が今よりもとても少なくメイン部門での11部門ということなのでケタが違います。
また、
ハリウッド黄金期でもあり、今日のように"他のパッとした作品がないね…"ではなく、
同年には"アンネの日記"、"北北西に進路をとれ"、"尼僧物語"、"5つの銅貨"や"お熱いのがお好き"など今日でも知られる作品が連ねていました。
本作の受賞は、作品賞、監督賞、主演男優書、助演男優賞…と軒並み続きます。
当時の製作費で
東京タワーが3つ建設できるほどの巨費をかけ製作された超大作です。
実際のセットの他に、初代のスターウォーズでも使われた最新のマットペインティング(現在のCG技術のイラスト版)技術を用いて壮大な
ローマ時代を再現しています。
ストーリーは原作かれ練り直し、観客の感動をより引き出す内容になっていて好感が持てました!
*本作は"イエスキリスト物語"であり、原作はより宗教色が強い物でしたから。
価格も安くとてもお買い得だと思います。
中学生のころNHKでやったのを録画して,大晦日には毎年見ていた.戦車戦を主にメッサラとの出会い,ガレー船など男らしいところばかり覚えていた.
それから20年余りたち,この一年”
ローマ人の物語”やドストエフスキーを読んで,キリスト教のヨーロッパに与えた影響について強い興味を持つようになった.そしてこのたび聖書を読んで,ますます勉強する気になっていたところ,この名作映画が1575円になっていた,即購入.
昔を思い出し正月に鑑賞,しかし昔の記憶と違って,最初からイエスのことばっかり描いている,こんなにイエス出てきたっけ?,副題どおり基本的にイエスの人生を描いた映画だった.大人になって,キリスト教の勉強をしてから見ると,子供のころの記憶にあるスペクタクル映画とはまったく異なった新しい楽しみ方が出来た.
やはりCGは画面を安くすることを再確認,背景のマットペインティングは古典の油絵を思わせ,むしろ前景の力強い俳優たちを伝説の時代につれていっているようなすばらしい効果をみせる.
一部のすきもない最高傑作,星五つ以外あるまい.
今回の4枚組の再発売では、ワーナーは大掛かりな70mmネガの修復を行っています。北米版を観たところ、キズ、褐色はほぼ皆無。本編も前半,後半とそれぞれ1枚づつ(計2枚)に収録され,画質も、前回の3層収録から2枚組4層に変わり、ビットレートも高め。全バージョンからのグレードアップは歴然としています。この作品は70mm(縦,横比率 1:2.20)をアナモフォニックレンズでさらに左右を拡大したスーパーパナヴィジョン(1:2.56)作品で、画角がいわゆるシネスコサイズ(1:2.25)よりも広く、前回のバージョンでは左右がかけていると批評されていましたが、今回はそこも訂正。結果、4:3モニターでは少し観づらいかもしれませんが、16:9のモニターでは本来の形にほぼ近い形で見れます。50インチのモニターで観ましたが、壮観です。
付属の特典ディスクの他の2枚は、名作のサイレント版(これ貴重!これだけでも必見です)と、新たに作られた40分程のドキュメンタリー、ニュースリール他、今は無きLowesState大劇場のティーザー、そして予告編の傑作中の傑作とも言える70mm再公開版トレーラーなどを収録した映像集。そしておそらく、多くの年配の日本の映画ファンの方々にとって感涙ものは,銀座の伝説の劇場,テアトル東京でのトーキョーロイヤルプレミアのニュースリールでしょう。若き日の陛下,ヘストン氏の姿,劇場の中も僅かですが拝見できます。
秋の夜長、年の暮れにじっくりとホームシアターで鑑賞したい特別版です。
中学3年生の時、初めてこの作品を観た。ショックで固まってしまうくらいの衝撃を受けたのを今でも覚えている。有名な大戦車競争のシーンは言うまでもないが、それ以上に、主人公ベン・ハーが苦難、復讐、失望などを通じて、人としての本当の愛を知っていくあまりにもスケールの大きなドラマに、とても深い感動を受けた。イエス・キリストも少し登場するのだが、宗教色はほとんど感じられないので嫌味がなく、もちろん固い印象も受けない。このイエス・キリストを通じて、ラスト、物語は意外な展開へ・・・。感動の結末は涙が止まらなく、鳥肌が立ったくらい大きなものだった。この歴史的名作を凌ぐ映画はまだ観たことがない。
アカデミー賞11部門受賞。星5つでは足りない。星50個!