「史記」の著者
司馬遷は、20歳から10年間の間に7回中国内を旅行したと筆者は規定しているが、その7回の旅を紙上で再現し、何の目的で、どういうルートで、何を見、何を考えたかを追求したのが、本書である。
二千年前の旅を追求するといっても、基本的には、「史記」や関連史料が材料なので、必然的に、「史記」そのものの内容の大まかな紹介にもなっている。だから、本書は読者に対する「史記」の案内という性格を持っている。
もう一点は、筆者が、
司馬遷のたどったルートを実際に旅行していることであり、本書には、筆者が撮影した写真と地図が結構収録されている。だから、本書は、「史記」の遺跡をたどる旅行ガイドブックの性格も一部は持っている。
以上2つの性格を持つ本書はユニークであるが、実際読んでみると、「史記」の内容を知らないと分からない地名・人名が出てくるので、なかなか初心者向きの本とは言いにくい。新書の制約だろうが、上下2巻ぐらいに分けて、「史記」の物語をあいだに入れたりするとかなり分かりやすくなるのではないか。写真をカラーにすればもっと良いだろう。