この本を高校生の頃に読んだことがある。「うさぎごころ」だけは、忘れずにずっと私の心の中にあった。でも題名が思い出せなかった。お話は全部覚えているのに。うさぎに対するおおかみの想いが、とても切ない。物語は白黒の映画のよう。幸い、図書館にあった著者;岸田今日子の本の中から探し出すことができた。20年ぶりに再会。本も味戸ケイコさんの挿絵でひときわ神秘的に生まれ変わっている。題名を忘れぬ前に本をすぐに買った。
大奥に奉公に上がった3人の女性(藤純子、小川知子、佐久間良子)の運命を、3話の準オムニバス形式で描いた大奥物映画の一。豪華な舞台セットと年寄筆頭松島を演じた山田五十鈴の貫録の演技が、作品に重厚さを与えています。
「そなたの生きる道は、産むしかない。」
「上様、如何様に篠の井を弄ばれましょうと、篠の井は私のものでございます。上様はただ抜け殻の篠の井を抱かれあそばすだけ。」
「私は、上様に、許して、私は、上様に・・・」
一応面白くは拝見しましたが、全体を覆う官能的色彩はともかく、肝心の個々のエロスという点では、小川知子の肉感的な演技と佐久間良子の表情の美しさ(あるいは、最後の刃傷シーンで白い着物の上から観て取れる彼女の下半身のライン)が目を惹いた程度で、残念ながら期待はずれでした。
なお、パケの裏面には作品の梗概が記載されていますが、これは詳細に過ぎ、却って興醒めです。初見の方は、読まないでそのまま映画を観るべきでしょう。
夏に
渋谷のパルコで週替りで上映していたのを見て買いました。
映画館で放映されたのはこの中の36話だけなので、そのほかの作品も見られます。
一話が短いので、集中力のない子どもにはぴったり。
ヤンソンさんがこだわってつくっただけのことはあって、普通のアニメにはない、フェルトなどの布のような質感がとてもよい!
しかも、遠近感がうまく表現されていたりして、20年以上前の作品にしてはとてもよくできています。
"チェブラーシカ"みたいなほのぼのした雰囲気がすきな人にはおすすめです。
しかも音楽もうきうきしてしまうようなもので、「ハッピー・バージョン」「ロマンティック・バージョン」の2種類のサントラも合わせてどうぞ。
作者の作品を読むのは初めてなのですが、この不思議な愛の世界と言うか、エロスの世界と言うか、とにかく、独特のファンタスティックな世界に取り込まれてしまった感じがします。
それほどこの文章は、麻薬のような不思議な魅力に溢れています。
逆に言えば、作者のピュアな精神の現れとも言えるかも知れません。
この作品集には、「オートバイ」「二つの月の記憶」「K村やすらぎの里」「P夫人の冒険」「赤い帽子」「逆光の中の樹」「引き裂かれて」と7編の短篇が収められています。
この中で作者の独自な世界を最も感じさせてくれるのは、やはり表題作の「二つの月の記憶」でしょう。
子供たちの遊びの世界が作る現実とは離れた別世界の中で、子供たちのピュアな気持が表現されています。
現実の世界ではヴァーチャルなものであって夢の世界のことなのですが、タッちゃんの肩に小さく刻まれた「ユリいのち」と言う刺青だけがリアルな事実として残されていると言うお話です。
短篇としての魅力という点で最も気に入ったのは、写真家の話を扱った「逆光の中の樹」で、話の落ちとそこへもってゆく展開が非常に魅力的です。