二人の侍の物語。
明治初期、戊辰戦争で最後まで抵抗を続ける旧幕府軍の立てこもる
五稜郭もついに落城となる。
その前夜投降を潔しとしない腕に覚えのある二人の青年が脱走した。
蝦夷地が北海道と名を変える頃、未だ自然が多く残り道路の整備もされていないようだ。
そんな厳しい大自然の中、新政府になってもアイヌの人々は和人たちの圧政下におかれたままである。
やがて二人は邪悪な和人たちとの戦いに巻き込まれていく。
北海道の大自然の中を颯爽と駆け抜ける侍の冒険活劇はアイヌの少年との友情やアイヌ女性との恋などをからめて進んでいく。
これを執拗に追いかける新政府の役人との駆け引きは映画「逃亡者」の様。
主人公の生き様はアメリカン・ニューシネマ風であり、背景にある問題提起は「ダンス・ウイズ・ウルブス」といったところか。
全体の流れは古き良き時代の勧善懲悪的西部劇といった感じである。
テーマは面白いので素敵な脚本があれば実写化で観てみたい。
表題にある
五稜郭はほとんど意味がない。
五稜郭にまつわる歴史上の人物や戊辰戦争の歴史的背景を期待する人には不向きです。
この物語は単に白虎隊だけに焦点を合わしたのではなく、その時代の
会津藩と幕府との葛藤や、
新撰組ならびに薩長の時代背景なども
よく表しています。
従って
タイトルは白虎隊ですが、むしろ幕末の時代全般的に見せてくれる感動のドラマです。
函館
五稜郭を知るに最適の一冊です。
学術的な記述もさることながら、発掘
調査の結果や国内外の稜堡型城塞との比較もあり、「真の
五稜郭の姿」を詳細に、かつわかりやすく説明されている良書です。
ドラマなどで見られる、虚構的な幕末の箱館戦争に夢とロマンと憧憬を求めている方にはもの足りなく感じるかも知れませんが、本来の幕末の蝦夷地管理と政策に関する知識を得ることができ、フィクション物をはるかに超えて、知的好奇心を満たしてくれることは間違いなしです。
五稜郭を知りたい方には一読をおすすめします。もちろん星5つです。