本格的なものなのか幻想的なものなのかまだ分かりませんが、ミステリー要素が濃くなり面白さが増しました。作者の作風の幅広さに感心しました。前作「
ふたつのスピカ」とは路線を分けた作品であることが、この巻ではっきりと読み取れました。それでもスピカに通じる暖かさはあります。一言一言がとても心に響きます。好きな台詞が一杯です。三人は互いの知らぬ間に心身共に成長していました。そのことに嬉しさや逞しさを感じました。しかし、大人になれば今まで避けて来た漠然とした不安、つまり現実と向き合わなければいけません。三人は一見同じ方向を向いているようで、向いていません。そんなに単純な話ではなかったのです。霖太郎の言うことは確かに正論ですが、「たかが正論」で片付けて欲しくありません。どこまでも真っ直ぐな信念なのですから。相変わらずのお転婆ぶりを発揮する伊都ですが、彼女にも心の内に秘めたことはあります。そして府介ですが・・・。どうしていつもそう達観しようとするのでしょう・・・どうしていつもそう物悲しげなのでしょう・・・。心配になってしまいます。次巻は大きな転換期を迎えることになるでしょう。これまで以上に目が離せません。
刀を抜かないことの強さもあるのだな・・・と思いました。立場の違いはあっても国を憂い、友を想う気持ちは三人とも変わらないんですね。それぞれの誇り、十分に見届けさせていただきました。時代が違えば迎える結末も違っていたでしょう。ラストは憎い演出ですね。読了後にスピカを読み返し再び胸が熱くなりました。柳沼先生、お疲れ様でした。
スピカから氏のファンになり、購入致しましたが、氏が一体何を伝えたいのか、表現したいのか私には理解出来ませんでした。これからストーリーが展開していくのでしょうが、破天荒な女の子のイメージが残っただけでした。続きに期待します。