レスリー・チャン、トニー・レオン主演の映画「ブエノスアイレス」のカメラマン、クリストファー・ドイルが綴る写真日記。
何と言っても、彼の映像同様に写真もスタイリッシュで、映画を観た人ならパラパラと写真を眺めているだけでも楽しめる。
撮影と平行して書かれた日記なので撮影の裏話や、撮影中の絶品ショットが満載。映画「ブエノスアイレス」の大ファン、出演者のファンなら1冊持っていても損はない。
性懲りもなく、喧嘩別れを繰り返す、腐れ縁の二人。
純真でまっすぐ なトニー・レオンとジゴロのようなレスリーの歯痒い愛。
クリストファー・ドイル独特のカメラワークで
スクリーンはカラーになったり白黒になったりを繰り返す。それをピアソラのタンゴが冷ややかに彩っている。この映画のなかで、チャンがタバコをもらい火するシーンが印象的だ。温かいオレンジの灯を通してチャンの蒼白い端正な顔が浮かび上がる。そして目を閉じると長い睫毛が影を落とす。彼のすべての仕草が媚びを売っているようで、観ているだけでドキドキしてしまう。
一方、トニー・レオンは一見すると大人の渋い男なのにふとした瞬間少年のような愛らしさを見せてくれる。保護欲が強い分、制服欲も強い。最後に出てくるイグアスの滝が彼の内面を表しているかの如く激しい。こんなに役になりきっているトニー・レオンだが、現地に着くまで自分がゲイ役である事を知らされていなかったという。
レスリー・チャンを亡くした事は
香港映画界にとって大打撃だろう。
この映画のラストを観ているとチャンの最期はああだったのかと気が滅入ってしまう。