三石琴乃さんと言えば、「葛城ミサト」の中の人、という方も多かろうが、筆者としては、「月野うさぎ」の中の人、となる。
筆者の最愛のアニメ作品は、「
美少女戦士セーラームーン」なのだ。
「セーラームーン」第1期放映当時、筆者は、駆け出しの社会人で、官公庁相手のシステム・エンジニアだった。
研修期間を終え、職場に配属されたとき、上司からこう言われた。
「ここに配属されたからには、「土日祝日連休盆暮れ正月」とは、無縁の人生が、定年退職まで続くと思ってくれていい」、
「セーラームーン」はテレビ朝日系列で土曜19:00から放映されていた。必然的に、VHSビデオレ
コーダー大活躍状態となった。
実際に、社会人としての人生が始まると、上司の言葉は、誇張でも、何でもなく、むしろ手加減された表現であることが、たちまち判明した。
1年365日24時間仕事仕事仕事。日付変更後に帰宅できれば、まだマシで、会社内に何故「
仮眠室」が完備されているのか、その「理由」も、たちまち判明した。
そんな仕事漬けの日々の中で、3倍録画で「セーラームーン」を視聴するのが、唯一の「憩いのひととき」だったのだ。
本作品を視聴していると、太陽系の惑星の
英語名が、脊髄反射で、答えられるようになる。
だが後年、よもや
冥王星が「惑星」でなくなるとは、流石に予想できなかった。
「セーラームーン」第1期が、クライマックスを目前に控えたとき、三石さんが緊急入院され、急遽、代役を務めたのが、後に「ちびうさ」役を演じることになる、
荒木香恵さんだった。
第1期最終2話では、大泣きさせられた。
あまりのショックで、ご飯が食べられなくなった女の子がいたそうだが、筆者には、その女の子の気持ちが、大変よく理解できる。
「セーラームーン」は好評を博し、晴れて第2期を迎えたが、第2期の最初の13話は、アニメオリジナルのエピソードが放映された。
原作漫画と足並みを揃えるための配慮だった。途中から三石さんが復帰され、復帰第1声が「お待たせ!」なのが、もう…もう…粋な演出に大泣きさせられた。
そんな「セーラームーン」が、初映画化されたのは、その年の年末だった。忙しさの合間を縫って、何とか時間を作り、公開日初日に備えた。
そして公開日初日、
池袋のシネマサンシャインで、映画「
劇場版美少女戦士セーラームーンR THE MOVIE」を見た…目撃した…。
…これまでの人生の中で、これ程泣いた記憶は、後にも先にもこれきりだ。一生分泣いた。
今でも「MOON REVENGE」のイントロが流れるだけで、パブロフの
犬の如く、涙目になる。
しかし、本作品を堪能するためには、「第1期をキチンと視聴していること」、「「月野うさぎ」と「ちびうさ」との関係を知っていること」が大前提となる。
故に天下万民には、お勧めできない。
筆者は働き過ぎて「うつ」となり、実家に帰った。
本作品を視聴すると、これまでの人生の中で、一番働いた記憶と、「セーラームーン」に魂を捧げていた記憶とが、ないまぜになり、泣き笑い状態となる。
第3期から登場する、「天王はるか」の中の人は、後に「碇シンジ」の中の人となる、緒方恵美さんである。
「月野うさぎ」と「天王はるか」、「葛城ミサト」と「碇シンジ」、これを「単なる偶然」と呼ぶのなら、この地球上に、「必然」など存在しないと断言する。