アキ・カウリスマキ監督、フィンランド映画。ともに失業した夫婦が立ち直るまでを描いた物語。演出も画面構成もストイック。だが結構最後まではらはらさせられる。不況による失業や銀行の貸渋りがでてきたりと日本と同じ状況があってなんだか他人事ではない。殆ど笑わない妻が引っ切りなしに吸うタバコは禁煙ばかりが叫ばれる軟弱な現代社会に反抗しているようで痛快。最後のシーンでもタバコを吹かしながら空を眺める姿がバッチリ決まる。不況が気になる中年世代は共感できる映画だと思う。
切なさと温かさとほんのりしたユーモアを、まるでサイレント映画のように映像で表現するところに我々がアキ・カウリスマキに夢中になるのだとすると、このカッ
プリングは正に最高の2本立て。この最高の監督の映画をまずはどれから見てみようと思っている方には、私はこのソフトをお勧めします。この後の“過去のない男”以降の作品の方が、無愛想な作風で無表情な登場人物が出てくるだけなのに妙に心にひっかかるカウリスマキ節が完成されているような気はしますが、それでもこの中期の2本には特に癖になる不思議な魅力を感じます。珈琲をがぶ飲みする男とウォッカをがぶ飲みする男の恋の珍道中ロードムービーと、不幸のてんこ盛りなんだけれども気が合う伴侶と2人でちょっと幸せそうにも見える夫婦の話。この2本の魅力は言葉ではとても表せません。ちょっとオフビートですが、気難しい映画ではなく最高に素敵な娯楽映画です。