ルネ・クレマン監督が子供の視点から描いた反戦映画の決定版!
パリが陥落、地方へ逃れる人々の列へ容赦ない
ドイツ軍戦闘機の
機銃掃射の雨が降り注ぐ、折りしもそこに通りかかった主人公一家の
三人は「川」の字の真ん中に少女を抱いて身を伏せた。
不幸中の幸いにも少女だけは無傷だったが両親と飼い
犬は命を
落としてしまうという衝撃のオープニング。
天涯孤独の身となった少女ポーレットは少年ミシェルの住む近くの農家
ドレ家で暮らすことになる。死んだ
犬を埋葬し十字架を立てたことから
二人は「死せるものには十字架を」という子供にしては禁断の遊びに
ふける・・・。
わずか五歳にして育ちのいい、おしゃまで、悲しい役を最後まで演じきった
ブリジット・フォッセーには無条件で拍手を送りたい。
1940年6月、南仏の田舎。ナチの爆撃機の機銃掃射で両親を失い、彷徨い歩く5歳の少女ポーレットは、農家の少年ミシェルと出会い、彼の家に連れていってもらう。ポーレットが抱いていた死んだ子
犬の墓を作るミシェルから、死んだものを葬る事を教わったポーレット。十字架を立てて死んだものを葬ることを覚えたポーレットは、ミシェルと一緒に死んだ動物たちのお墓を作って遊ぶようになる。・・・
戦闘を描いているのは、最初の機銃掃射の場面くらい。あとは牧歌的な南仏の田舎の風景が広がり、その中で無邪気に遊ぶポーレットとミシェルがいます。ゴキブリやモグラ、ヒヨコなど自分の身近で死んだ動物を葬るために、やがてミシェルは墓場から十字架を盗んでくるようになります。2人の何気ない遊びが大人に知れてしまったとき、大人は目くじらを立てて怒るのに、一方でミシェルの家族は、隣人といがみ合い、ついには墓穴でとっくみ合いの喧嘩までしてしまう。子供の無垢な視点から浮き彫りにされる大人達のエゴ、そのために戦争も起こってしまったんだと思うと何だかやりきれなくなりました。
ポーレットとミシェルを演じた2人の子役の演技は、実に見事です。ナルシソ・イエペスの物悲しいアコースティックギターの音色も、この映画にマッチしていて一層気分をかきたてられます。戦闘の場面は少ないけれど、この映画は戦争の愚かしさを訴える、見事な反戦映画だと思います。