ある意味でこれは戦後の
ドイツ文学のなかで最も恐ろしい本である。
男は詩で名をなした。
だがその詩は戦中のユダヤ人虐殺に関わるものだったので、男は周囲からの心ない誤解によってやがて壊れていく。
かつて恋仲にあった女は、男の妻といっしょになって、破壊を食い留めようとする。
だがその男は聞く耳をもたない。
男は自殺する。
女と妻は男の死後も、励まし合っていく。
女のほうが男よりも強かった。
だがそんな男を守ろうとする女のけなげさに絶句するしかない。
結局は投函しなかった191番目の手紙が辛い。
(きわめて丁寧なこなれた訳だが、あともう少し工夫(とくに編者解説)がほしかったので-1。
例1
―は――にしないと読みにくい。
例2
279ページ 主文−複文、主語−述語が、分かりにくい
私は、あなたが私を一人の信頼のおけるアンチ・ナチという役割に還元するのではと、少しばかり危惧しています。あるいは一人の信頼のおけないそれという役割に、もし私がこのブレッカー批判にあなたが期待するように反応しなければ。
訳者の本格的な著書が読みたい。)
マラーホフファンとして、とても興味深く読みました。
幼少期から
ベルリン国立歌劇場の芸術監督就任まで、満遍なく書かれています。本文は2002年時点の内容で、それ以降については触れられていません。ただし、マラーホフの母上のインタビューは2004年12月のものです。
とても興味深かったのは、彼が役とどのように向き合っているかということでした。普段、舞台を鑑賞しているだけでは絶対に分からなかったことですし、今まで色々な映像や記事、書籍を通しては完全に知り得なかったことが書かれていたので、とても嬉しく思いました。
また、ダンサーとして、一人の人間として、ウラジーミル・マラーホフという人物が、とても優れた、不世出の人物であることを改めて実感することができました。つくづく思ったのは、彼の活躍期に、しかも絶頂期に居合わせることができて、本当によかったということでした。
マラーホフのファンの方は勿論、これから彼のバレエを観てみようと思われる方は、お読みになって絶対損はないと思います。写真も多数掲載されており、世界的に稀有なダンサーであるマラーホフの成長の過程を見られる数少ない機会だと思います。(個人的には、「コート」の写真が掲載されていたのが嬉しかったです)